中小企業がデザイナーと組んで開発したヒット商品、ウエアラブルメモ「wemo」。腕に巻いて使用するシリコンバンド型のメモが、マーケティング予算が限られているにもかかわらず、発売以来1年間で10万本の受注を獲得。海外でも販売が決まった。現在進行形のプロジェクトの全貌を追う。

 前回は、wemoの発売に向けて準備が必要となるWebやチラシなどの製品情報の設計について書きました。今回は発売後の反響と、その裏で企んだビジネスモデルの設計についてお伝えします。

【2017年11月21日 wemo発売】

 ついにwemoのバンドタイプをAmazonから発売できた。多くの方々にお待ちいただいていたので、一安心である。展示会出展後もさまざまなメディアに取り上げられたお陰で、発売の今日に至るまでたくさんの方々から問い合せを頂いた。

 特に印象深かったのは、自身や家族がADHD(注意欠陥多動性障害)という方からのメッセージである。「日常生活上の悩みをwemoは解決できるので、早く発売してほしい」「同じような悩みを抱えている人に広めてほしい」という連絡を頂き、とても励みになった。

 発売を延期した際には、一部の方から、「期待させるだけさせておいて発売しないとは何事か」とお叱りも受けていた。自分のことを振り返ると、発売の延期に腹を立ててわざわざメーカーに連絡した経験は一度もない。お叱りを受ける状況をつくってしまったことは大いに反省すべきであるが、別の見方をすると、それだけ渇望いただけている証拠であり、とてもすごいことだと思った。

 先行発売ということもあり、告知は私のSNSからのみであったが、初日は数百本販売できた。その週のAmazonメモランキングでは1位を獲得することができ、滑り出しは上々である。

図1:先行発売の告知。当時はwemoの公式アカウントもなく、私の個人アカウントからの告知のみであった (C)kenma Inc.
図1:先行発売の告知。当時はwemoの公式アカウントもなく、私の個人アカウントからの告知のみであった (C)kenma Inc.

【2017年12月6日 プレスリリース】

 wemo初のプレスリリースを配信した。12月中旬から開始する都心の大型量販店での発売に合わせたものである。

 効果はすぐにあり、Webを中心に多くのメディアで取り上げてもらうことができた。共同通信社からも連絡があり、20以上の地方新聞でも掲載された。

 その記事をご覧になった方から、「〇〇県ではどこで買えるのか」という問い合せがコスモテックに直接電話で寄せられ、うれしい悲鳴の報告を受けた。EC(電子商取引)を利用しない層が一定数いることを、改めて認識することができた。

図2:記念すべきwemo初のプレスリリース (C)kenma Inc.
図2:記念すべきwemo初のプレスリリース (C)kenma Inc.

【2018年4月1日 販売目標本数達成!】

 発売から約4カ月がたち、改めてコスモテックより販売本数の報告を受けた。損益分岐点となる初年度の販売目標本数1万本を達成したとのことであった。どうやら、仕込んでいたもう一つのビジネスモデルが功を奏し、販売本数を押し上げたようである。

 「もう一つのビジネスモデル」とは、法人ノベルティー向けカスタマイズである。具体的には、企業の要望に応じてwemoへの名入れや表面デザインの変更、ベースカラーの変更ができるようにした。

 このモデルの一番のメリットは、発注本数が小売りに比べて非常に大きいことである。最低数百本から数千本といった単位での相談があり、販売本数の向上への大きな貢献が期待できた。

 また、頻度は多いが一度の購入本数が小さい小売りモデルと、この法人向けモデル(頻度:少、発注本数:大)は補完関係にあり、ビジネスモデルのポートフォリオとしても理想的であると考えた。

 余談ではあるが、ビジネスモデルの開始順序は非常に重要である。実はこの法人向けモデルは、17年7月の展示会時にも既に幾つかの企業からオファーがあったが、その時点では私自身、非常に消極的だった。発注本数は魅力的だが、「wemo=ノベルティーグッズ」というイメージが付くことを恐れたからである。

 しかし、前述した通り、数々のマスメディアに取り上げられ、「現場向けの新たな文具」としてのイメージができつつあったため、製品発売後に試験的にノベルティー対応を始めるに至った。今ではwemo事業のもう一つの収益源となっている。

図3:現在のノベルティモデル (C)kenma Inc.
図3:現在のノベルティモデル (C)kenma Inc.
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