中小企業がデザイナーと組んで開発したヒット商品、ウエアラブルメモ「wemo」。腕に巻いて使用するシリコンバンド型のメモが、マーケティング予算が限られているにもかかわらず、発売以来1年間で10万本の受注を獲得。海外でも販売が決まった。現在進行形のプロジェクトの全貌を追う。
前回は、wemoのターゲット候補へのアプローチ手段の獲得の工夫について書きました。今回は発売に向けて準備が必要となるWEBやチラシなど、製品情報の設計についてです。
【2017年9月4日 @kenma】
バンドタイプの発売が11月20日に決定し、デザインまわりで準備しなければならないことを整理する。それほど難しいことではなく、当たり前にまず必要な、製品パッケージ、WEBサイト、チラシやリーフレットといったものが考えられる。
また、発売日に「HOSPEX」という医療系の展示会に出展予定のため、ブースデザインも必要となる。細かい準備は他にも無数にあるが、大きなものはこんなところだろう。
次に考えるのは、上記をデザインするために必要な要素である。俯瞰(ふかん)してみると、ロゴや特徴、イメージ画像など共通して使用するものも多い。
この要素については、いつも使用しているフレームワークがある。縦軸に[抽象]-[具体]、横軸に[言語]-[非言語]を取り、4象限で把握している。
[抽象×言語]に当てはまるのはネーミングやタグラインなど。[具体×言語]には、製品の特徴やストーリーなどが当てはまる。
同様に、[抽象×非言語]は、ロゴやピクトグラム、VI(Visual Identity)のルールなどが、[具体×非言語]は、画像やイラストなどが該当する。
前回の展示会で暫定的に準備したネーミングや特徴、ストーリーといった[言語]側の要素はそのまま使えそうな印象だ。しかし、[具体×非言語]の画像については、更新する必要があった。前回は展示会直前に方針を変更したため、製品が間に合わなかったからだ。早速スタッフに相談し、着手してもらうことにした。
【9月18日コスモテックMTG @kenma】
各要素が出そろってきたところで、展示ブースとそこで配布するチラシの構成を検討する。
前回の展示ブースがうまく機能していたので、その構成を基本的には引き継ぐことにした。展示ブースは3×3メートルの最小サイズであったが、3つのパートに分けて計画を練った。3つに分けた理由は、来訪者に伝える情報量と順序を明確にしたかったからである(詳細は後段「ビジネスデザインの引き出し」『3秒/30秒/3分ルール』参照)。
最も重視したのは、足を止めてもらうことであった。当然ながら展示会は情報にあふれている。そのような状況の中、無名のwemoブースに立ち止まってもらうために何をすべきか、頭を悩ませていた。
結論としては、壁面に300本のバンドを挿し、ボールペンも準備して自由に試し書きができる状況をつくることになった。
インパクト優先で計画したものであるが、情報量にも気を配っている。展示側からするとたくさんの情報を伝えたくてたまらないが、潔くバンド300本の壁面のみをデザインし、文字情報がなくても機能するように計画した。
この壁面を見て立ち止まり、興味を持った人向けに用意しているのが、2つめのパートの側面の壁である。ここでもできるだけ文字情報を少なくし、ぱっと見ただけで製品の概要が分かるように計画した。
そして最後のパートが、製品の詳細が分かるパネルゾーンである。ここまでくる人はwemoに興味を持った人なので、文字情報が多くても読んでもらいやすい。とはいえ、できるだけ容易に理解ができるように、製品活用イメージを大きく配置した。
同じように、当日配布するチラシについても検討した。基本的には同じ考え方で、初めは文字情報を少なく、興味を持った人が読むであろう後半部分に文字量のある要素を配置する。チラシはA4版の両面で作成することにしたので、表は「メインビジュアル+名称 → ピクトグラム3つ+短い記述 → 活用シーン」の順に構成。裏面は、製品の詳細情報とストーリーを配置した。
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