中小企業がデザイナーと組んで開発したヒット商品、ウエアラブルメモ「wemo」。腕に巻いて使用するシリコンバンド型のメモが、マーケティング予算が限られているにもかかわらず、発売以来1年間で10万本の受注を獲得。海外でも販売が決まった。現在進行形のプロジェクトの全貌を追う。
前回は、「国際 文具・紙製品展(以下ISOT)」出展をきっかけにTVに取り上げられた様子と、その要因をお伝えしました。今回はwemoのターゲット設定と展示会の反響を踏まえた事業プランについて書きます。
【2017年7月11日 展示会の振り返り@kenma社内】
展示会の翌週、コスモテックの林梅華さんから、出展ブースへの来場者数や引き合い等の成果を共有してもらう。大手スーパーをはじめとする小売チャネルから、「発売日が決まったら教えてほしい」といった声が多数あり、想定をはるかに超える結果であった。
コスモテックの方々には、「現場最前線のワーカー」がターゲットだと説明してもらうようにお願いしていたが、こちらも思い通り機能していたようであった。このターゲット設定について、展示会前に考えていたことを少し振り返りお伝えしたい。
wemoの開発を決めたきっかけの一つは、多くの看護師の方が手に直接メモを貼るのを経験していることであった。そのため、当初のターゲットは「医療現場で働く人」としていた。その後、リサーチを重ねるなかで、他業界でも同様のニーズがあることが分かってきた。例えば、宅配ドライバーや農家、保育士の方などである。
このリサーチ結果から、「製造現場や建設現場でも役に立てるのではないか」など、さまざまな仮説が生まれ、対象を医療現場に絞るのは得策ではないと思われた。とはいえ、ターゲットとして可能性がある業種を羅列するのも、煩雑な印象を与える。そこで考えたのは、可能性のある業界・業種をひとまとめにしたワードで示すというアイデアである。
具体的には「現場最前線のワーカー」というワードでターゲットを説明することにした。このやり方だと、まだ発見できていない職業・活用シーンもカバーできる。製品のリーフレットでも表現を工夫し、このワード+具体的な現場で示すことで、より多くの人に自分ごとにしてもらう工夫を行った。
コスモテックの方々にこのターゲット設定を説明した際には、非常に驚かれた。ターゲット設定は、性別や年代で示すものだと思い込まれていたようであった。
【7月18日MTG@kenmaオフィス】
コスモテック社長の高見澤友伸さん、営業部長の下山卓紀さん、営業担当の林梅華さんが来社。ISOTの反響を振り返ると共に、今後の展開をどうするかを話し合うことになっていた。
「こんなに反響があったのは初めてです!」
開口一番、高見澤さんから労いの言葉を頂く。これまでの出展ブースでは、これほど人があふれ返るような経験はなかったらしい。数々のTVやWebメディアで取り上げられたことにより、問い合わせが殺到し、この1週間は対応に追われてうれしい悲鳴を上げたとのことであった。
ポジティブな話が目白押しで、そのまま飲みに行きたい気分だが、本題に入る。
初めのアジェンダは、どの製品を発売するかについて。展示会では以下の3点を展示し、反応を見ることにしていた。
- シールタイプ
- バンドタイプ
- バント+シールタイプ(バンドにシールを貼って使用するタイプ)
我々としては、バンドタイプで行くべきではないかとあらかじめ話し合っていたが、コスモテックも同意見だった。シールタイプはメディアも含め反応が良く、想定していたニーズもありそうであった。しかし、シールタイプは1回使い切りのため、価格面で不安が残るとのことであった。それに比べてバンドタイプは何度も使え、販売しやすい印象であった。
発売日は10月を目指すことになった。一番のボトルネックはバンドへのコーティングがいつ完成するか。油性ボールペンで書いた文字を、消しゴムで跡を残さず消せるようにする必要があった。どうやら既にいくつかの試作を進めており、問題ないとのことであった。
次に議論したのは、ターゲティングについて。展示会前はこのような反響を全く想定していなかったので、狭く手堅くニッチな領域から攻めていく予定だった。しかし、展示会では大手も含め多数の小売店から引き合いがあり、一般消費者も対象とすることになった。
とはいえ、ターゲットは「現場最前線のワーカー」であることに変わりはない。販売チャネルが法人向けだけでなく、個人向けも対象とすることになっただけである。今回の反響は一過性のものである可能性が十分にあり、そのためにも手堅いニーズを把握しておく必要があると考えた。どのようなことを検証するかは、一度こちらで考えることにした。
販売チャネルについても併せて検討する。私からはむやみに販路を広げるのではなく、最初は絞りながら展開すべきだと提案した。幸いにもたくさんのメディアに取り上げられたので、Amazonを活用すれば大部分はカバーできると考えた。また、いつ何本売れているのか、メディア掲載による反応を知っておきたいと考えたからである。
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