Society5.0の実現とMaaS

「狩猟社会」「農耕社会」「工業社会」「情報社会」に続く、人類史上5番目の新しい社会が「Society(ソサエティ)5.0」であり、政府が強力に推し進めている
「狩猟社会」「農耕社会」「工業社会」「情報社会」に続く、人類史上5番目の新しい社会が「Society(ソサエティ)5.0」であり、政府が強力に推し進めている

 産業政策以外にも、以下の3つの観点からMaaSは国家戦略上、非常に重要だ。

 第1に、MaaSは、クルマを運転できない人にもマイカーを持つのと同等以上のモビリティの自由を与える。運転できる人、運転手を雇える人にしか移動の自由を与えてこなかったマイカーよりももっと間口の広い人に、移動の自由を享受できるようにするのがMaaSだ。これにより、従来のマイカー依存社会では移動に困難を伴っていた高齢者や傷病者、障がい者、未成年者が救われる。とりわけ、マイカー依存度の高い都心郊外や地方部で、マイカーがなくとも生活できるようになることは居住福祉の観点からも重要だ。

 第2にMaaSは、人間中心の街と社会をつくる機運を生み出す。マイカー依存が進んだ結果、クルマがないと生活できない街が増え、中心市街地は衰退して駐車場だらけとなり、子供の遊び場も少なくなってしまった。クルマや道路が進化しても、渋滞問題、環境問題、事故の問題はなかなか解決されない。

 この状況を劇的に変えるには、マイカー利用をぐっと減らすしかない。MaaSは、マイカーと同等以上の利便性を提供することで移動の自由を確保し、クルマ中心(Vehicle Centered)になっていた街や社会を人間中心(People Centered)に生まれ変わらせる機運を醸成するのである。

 そして第3に、以上を通じて、MaaSは地域の繁栄と社会課題の解決を促す。移動の自由を享受できる人が増え、街が人間中心になれば、人の外出が促され、往来に人が戻り、地域にはにぎわいが生まれる。その結果、地域の中でお金が回り、地域が潤い、持続可能になる。

 内閣府によれば、Society5.0とは、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」である。地域の繁栄と社会課題の解決を促すMaaSは、国是であるSociety5.0の実現に資するのだ。

『MaaS モビリティ革命の先にある全産業のゲームチェンジ』(日経BP社)
「交通版GAFA」は誰の手に? 国家戦略としてのMaaS(画像)
2030年、世界で100兆円以上に達すると予測されるモビリティサービスの超有望市場「MaaS(Mobility as a Service、マース)」。自動車メーカーだけではなく、鉄道やバス、タクシーといった公共交通、シェアリングビジネス、配車サービスをも巻き込む「『100年に一度』のゲームチェンジ」で生き残る秘策とは――。
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