「テレビは消費者や広告主の人気者でいるうちに変わらなければ、手遅れになる」。デルフィス(東京・千代田)の土橋代幸常務はこう警鐘を鳴らす。同氏は日本アドバタイザーズ協会(東京・中央、JAA)電波委員長として、テレビCMの取引指標「P+C7」の導入を推進した。特集5回目は広告主がテレビに求める変革を土橋氏に聞いた。

「5Gで放送とデジタルの壁が崩れる」 テレビは生き残れるか(画像)
土橋代幸氏
デルフィス 常務取締役
1984年トヨタ自動車に入社。財務部を経て90年に宣伝部へ異動。初代プリウスや企業広告を中心に手掛けた。2009年のトヨタマーケティングジャパン設立を経て、13年取締役就任。18年6月より現職

過去にはJAAの電波委員長を務めた経験もあります。テレビCMの抱える課題をどう考えていますか。

JAAの電波委員長時代に「テレビCMの放送は止めたらどうかとトップから言われた」と立て続けに3人ぐらいから相談を受けることがありました。これがテレビCMの現状に対する危機感が強まるきっかけとなりました。

 すぐさまJAAの会員にテレビCMに関するアンケートをとりました。103社が受けてくれましたが、そのうち37社が「社内でテレビ媒体の利用をやめてみてはどうかという意見が挙がったことがある」と答えました。当時、「宣伝部長がテレビCMをやめたらどうか」と言われることは考えられないと思いましたが、よく考えれば、テレビは一番お金を使っている広告宣伝手法の中で、最も(データが)ブラックボックスになっています。経営者から見れば、説明がつかない金を一番使っているということに見えても仕方のないことでした。

 宣伝部長はものすごく(企業の)お金を持っているような立場に見えますが、実際は事業部などから宣伝費として預かっている立場。一番良い作戦で最も効果を出すことを請け負うため、責任がとても重い。昨今、アドフラウド(広告詐欺)などで色々な嘘が明らかになってきてはいますが、それでも結果は数値としてどんどん出てくるデジタルマーケティングは責任に対する説明がつきやすい。

 アンケートでもきちんと経営者に説明できるデータがそろえば、テレビはやりやすくなるという回答は多い。デジタルマーケティングが出てきたことで、データがそろうようになりマーケティングの成果を説明しやすくなっている一方で、最も金がかかっているテレビはその隙間を埋められていないのが課題です。

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 私は電波委員長を務めていたころに、オンラインでテレビCMの広告クリエイティブを入稿できる仕組みづくりを進めました。運用型のマーケティングをするためのベースとして作ったものです。ところが、そこに満足していて、それで何ができるかというサービスの向上につながっていないのも課題です。広告主からすれば、明日放送したかったら今日入稿できる。そんなことも可能になったはずなのに。業界全体で電波価値の向上のために何ができるかに、すべてのベクトルを向けていかなければなりません。徐々に変わりつつあるものの、変化のスピードは遅いのが現状です。

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