2018年10月、マルニ木工(以下、マルニ)がリニューアルを発表したのが、広島にある本社工場で使用する作業用ユニホーム。背景には近年、本社工場の見学者数が増加していることがある。

マルニ木工創業90周年を機に誕生したのが、3代目となる作業用ユニホーム(左)。広島県にある本社工場に年間400~600人が訪れることもあり、2代目(中)から30年を経て全面刷新。それ以前に使っていた初代(右)(写真/谷本 夏)
マルニ木工創業90周年を機に誕生したのが、3代目となる作業用ユニホーム(左)。広島県にある本社工場に年間400~600人が訪れることもあり、2代目(中)から30年を経て全面刷新。それ以前に使っていた初代(右)(写真/谷本 夏)

 マルニが工場見学を始めたのは08年。それまでは技術の流出などを危惧し、外部へは工場を閉ざしていた。10年から、取引先やつながりがある人々向けに工場見学を本格化し、13年は461人、18年(11月8日時点)は620人が訪れた。同社の「HIROSHIMA アームチェア」が米アップルの新社屋に数千脚導入されるなど話題を呼ぶにつれ、ものづくりの現場への注目度も年々高まっている。

 マルニでは工場見学と並行し、トヨタ生産方式を取り入れるなど、働きやすい環境づくりも推し進めた。しかし、マルニのものづくりは、工場設備だけでは完結しない。例えば、HIROSHIMA アームチェアの磨きの工程など、人の手で仕上げる作業があるからだ。そこで、スタッフ一人ひとりがものづくりに取り組む姿勢を表現するにふさわしい、新たなユニホームを求めた。

 現在、工場で使用中のベージュのユニホームは、創業60周年を機に新調した「30年もの」。今回のリニューアルは、工場を訪れる人々が増えたことや18年が創業90周年の節目であることも大きな要因だ。山中武代表は「100周年を迎えたとき、工場を木工を志す世界中の人々が訪れるような場所にしたい」と目標を掲げている。

課題:1次試作の開発は工場のリサーチからスタート

 ユニホーム刷新に協力したのは、当時オンワードホールディングス副社長だった馬場昭典氏だ(現在は、子会社のチャコットの代表取締役会長)。100周年を見据えてそれまでに工場を特別な場所にしたいと考える山中代表の目標と、その頃「ファッションの力でブルーカラーをサファイアカラーに輝かせたい」と考えた馬場氏の目標が合致し、プロジェクトが動き始めた。

 刷新案の提示のため、馬場氏はデザイナーと共にマルニの工場を訪れ、どのようなユニホームにすべきか、工場内の観察やスタッフへのヒアリングを行った。それを踏まえて提案したのがカバーオール型のユニホームの一次試作。カバーオールはジージャンの丈が長いタイプで、現在は普段着にも用いられるものだ。

 馬場氏は、「未来的な印象なども検討したが、『100年後も世界の定番として認められる』というマルニの哲学に通じるよう、普遍的なものにしたいと考えた。そこで、作業着のルーツとも言えるカバーオールをベースにした」と語る。