大阪府泉南市に本社を構える製紙会社、山陽製紙では、企業から不要になったコピー用紙を回収し、オフィス用品やライフスタイル雑貨に再生するサービスを手掛けている。従来のリサイクルとは違い、回収したコピー用紙を雑貨などに「アップサイクル」するのがコンセプトだ。

不要になったコピー用紙を回収し、雑貨として「アップサイクル」するサービス「PELP!(ペルプ!)」。コピー用紙の回収には、専用の回収袋を使用する。以前は「KAMIDECO(カミデコ)」という名前だったが、サービス内容を分かりやすく伝えるため、「PAPER HELP PROJECT」を表す「PELP!」に変更した
不要になったコピー用紙を回収し、雑貨として「アップサイクル」するサービス「PELP!(ペルプ!)」。コピー用紙の回収には、専用の回収袋を使用する。以前は「KAMIDECO(カミデコ)」という名前だったが、サービス内容を分かりやすく伝えるため、「PAPER HELP PROJECT」を表す「PELP!」に変更した

 以前は「KAMIDECO(カミデコ)」というブランド名で活動していたが、2018年5月からはエイトブランディングデザイン代表のブランディングデザイナー西澤明洋氏を迎え、「PELP!(ペルプ!)」にリブランディングした。

 まず、PELP!のコンセプトに賛同した企業に、専用のコピー用紙回収袋を購入してもらう。企業は、回収袋の中に古紙を梱包し、指定工場に発送。回収袋は一度も開封されることなく溶解処理され、100%再生紙に生まれ変わる。企業のオーダーがあれば、同再生紙を利用して、オリジナルの封筒や名刺、パンフレットなども製作する。

 山陽製紙が同サービスを始めた背景には、同社の強い「思い」がある。

 「紙作りの現場では、日々大量の水や電気、ガスを消費する。山陽製紙でも、毎日約2000トンの地下水を使用し、電気代は売り上げの約5%に達する。紙自体も、大量生産・大量消費が当たり前になり、毎日大量に廃棄されている。一枚一枚の紙を大切にしていくことで、環境問題に貢献していきたいと考えた」(山陽製紙代表取締役の原田六次郎氏)。

KAMIDECO時代は、無料でコピー用紙を回収し、出口商品である雑貨販売で利益を得ていた。しかし、コピー用紙の回収だけを利用して雑貨は買わない企業などもあったため、収益基盤が不安定だった。PELP!では、会員制を導入し、回収袋を購入してもらうスタイルにすることで、出口商品が売れなくても赤字になりにくい仕組みに変更。PELP! BAGは5袋(1袋の容量は約10~15kg)で、宅配便着払い伝票が5枚付きで1万2500円(税別)
KAMIDECO時代は、無料でコピー用紙を回収し、出口商品である雑貨販売で利益を得ていた。しかし、コピー用紙の回収だけを利用して雑貨は買わない企業などもあったため、収益基盤が不安定だった。PELP!では、会員制を導入し、回収袋を購入してもらうスタイルにすることで、出口商品が売れなくても赤字になりにくい仕組みに変更。PELP! BAGは5袋(1袋の容量は約10~15kg)で、宅配便着払い伝票が5枚付きで1万2500円(税別)

課題:サービス内容が伝わりにくく収益も不安定

 強い思いを持ってスタートしたKAMIDECO。当時は、取引先や顧客、知人の経営者などを中心に、口コミやDMで販路を開拓していたが、なかなか周知されずに悩んでいた。

 「そんなとき、西澤氏のセミナーを受講し、その考えに共感した。西澤氏なら自分たちの『思い』を大切にしたブランディングをしてくれるだろうと思い、セミナー後に仕事を依頼した」(原田氏)。

 西澤氏が抽出した課題は2つある。「1つは、KAMIDECOの仕組みが一目で分かりにくかったこと。KAMIDECOの由来は『紙でエコする』だが、『デコレーション』などの言葉を連想する人も多く、サービス内容に誤解を与えていた。2つ目は、収益のポイントが出口商品しかなかったこと。当時KAMIDECOでは、無料でコピー用紙を回収し、出口商品である雑貨を販売することで利益を得ていた。しかし、コピー用紙の回収だけを利用して雑貨は買わない企業などもあり、Win-Winとは言いにくかった」(西澤氏)。

 課題を抽出するために実施したのが、プロジェクトメンバーを対象としたヒアリングやワークショップだった。山陽製紙からは6人が参加したワークショップでは、経営者はもちろん、営業やマーケティング担当者など、あえてバラバラの役職者を集めた。「ブランドの強み・弱み」などのテーマを設定し、全員の答えを並べていった。異なる立場から物事を見ていくことで、事業の状況を正しく把握することができたという。半年ほどかけて参加者全員の意識レベルを擦り合わせていった。

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