「グリコピア神戸」は江崎グリコが運営する菓子の工場見学施設だ。2018年で開館30年となるのを機にリニューアルし、10月1日にオープンした。デジタルとアナログの両方で、菓子作りを体験できるコーナーを新設。土日祝日は3カ月先まで予約でいっぱいという人気ぶりだ。

 リニューアル前から人気コンテンツだった「ポッキー」や「プリッツ」の製造工程見学ツアーの内容や内装デザインを刷新するとともに、デジタルとアナログの両方で楽しめるように工夫した。

課題:未来にわたって楽しさを提供するためにどうあるべきか

 「リニューアルに当たっては、30年たって古くなったから、今に合わせて改修しようという発想ではなく、5年後、10年後、さらにその先にわたってずっと楽しさや体験を提供し続けるにはどんな施設であるべきかという発想で考えた」。マーケティング本部広告部の鈴木輝生マネージャーはこのように説明する。そこで重視したことが、来館者が自分の五感で手応えをもって体験し、それを共有できる仕掛けだ。

 エントランスに入ると、巨大なポッキーのトンネルが出迎えてくれる。この前で記念写真を撮った後、トンネルをくぐり抜けるところから工場見学ツアーがスタートする。「従来は記念写真を撮るといっても外にあるロゴ入り看板ぐらいしかふさわしい場所がなかった」(鈴木氏)。エントランスにこうした演出を施すことで、「本当にポッキーの工場に来たんだ」というワクワク感と期待感が高まる。SNSなどを通じて見た人にも一目で分かるという、ネット時代を意識した仕掛けでもある。

グリコピア神戸外観。「ポッキー」「プリッツ」「ビスコ」などを製造する、グリコの菓子製品の主力工場と一体となった施設だ
グリコピア神戸外観。「ポッキー」「プリッツ」「ビスコ」などを製造する、グリコの菓子製品の主力工場と一体となった施設だ

検討:来館者が五感で体験し共有できる施設を目指す

 新しい体験を提供するコーナーとして新設したのが「デジタルクッキング体験」と「マイビスコクッキング」だ。

 デジタルクッキング体験は、画面をタッチしながら、世界に一つしかないデジタルのオリジナルスイーツを作るコーナー。画面をタッチして材料をかき混ぜたり、息を吹きかけて生地を焼いたりして、思い思いの色や形の菓子を作り上げていく。作り上げた菓子は自分の席の目の前にホログラムで表示される他、最後には、全員が作った完成品を正面のスクリーンで発表。さらに作品はサーバーに蓄積され、自分の作品をダウンロードしてSNSなどでシェアすることもできる。

 「マイビスコクッキング」は、隣にある本物の工場で使っているのと同じビスコの生地やクリームを使い、オリジナルのビスコを手作りする。完成したビスコはオリジナルパッケージに入れて持ち帰ることができ、家に帰ってからも家族や子供たち、友人たちと体験を分かち合える。

デジタルクッキング体験では、画面上に表示される菓子の豆知識を学びながら菓子作りを体験できる
デジタルクッキング体験では、画面上に表示される菓子の豆知識を学びながら菓子作りを体験できる
デジタルクッキングのコーナーは、手元の画面の先にある棚のような部分に、ホログラムで自分が作った菓子が表示される
デジタルクッキングのコーナーは、手元の画面の先にある棚のような部分に、ホログラムで自分が作った菓子が表示される
2階がポッキーの製造ライン、4階がプリッツ製造ラインの見学コースになっている
2階がポッキーの製造ライン、4階がプリッツ製造ラインの見学コースになっている
商品を焼いて切って袋詰め、箱詰めする工程が、一部の企業秘密を除いて間近で見られる
商品を焼いて切って袋詰め、箱詰めする工程が、一部の企業秘密を除いて間近で見られる
ポッキーの見学ラインには潜望鏡のような謎の装置を新設。何が見えるのかは来た人だけのお楽しみとして非公開
ポッキーの見学ラインには潜望鏡のような謎の装置を新設。何が見えるのかは来た人だけのお楽しみとして非公開

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