東京・池袋の「サンシャインシティ」にあるサンシャイン水族館の来場者数が伸びている。2011年と17年に大規模なリニューアルを実施し、11年度の来場者数は約162万人、17年度は過去最高の約197万人を記録。都心の屋上という“制約”を逆に強みに変えた発想とは?

 サンシャイン水族館は、地上約40mのビルの屋上にある水族館で、1978年に開業。当時は「サンシャイン国際水族館」という名称で、インターナショナルな魚を集めた都心の水族館としてオープンした。78年から2010年までの32年間で累計3500万人が来場。年間来場者数のピークは、1985年度の約168万人。ラッコやウーパールーパーなど、都内初となる生き物の公開が続き、その後も来場者数は130万人前後を推移していた。87年には屋外エリアに水槽を新設したり、95年からは「自然まるごと水族館」というコンセプトで水辺で暮らす陸上の生き物を公開したりと、展示方法の見直しや改装などは何度も実施してきた。だが、97年度以降、来場者数は年間100万人を下回り、低迷していたという。

課題:進化した新技術を取り入れ来場者数をV字回復へ

 停滞気味だった来場者数をピークの頃に戻し、さらに伸長させるために、大規模リニューアルを検討した。水族館の展示や飼育の技術は進化しており、水槽の形や素材などの選択肢も増えている。だが、岩やサンゴなど水槽の中に設置するアイテムやライティングなど、新しい技術を取り入れても、部分的な改修ではイメージ通りに表現できないことが分かった。そのため、単に水槽の中身を変えるのではなく、展示方法をゼロから考え直し、白紙の状態で作り変えるべきだと判断した。「一部分だけ変えてもリニューアルしたことが伝わりにくい可能性があった。新しい素材や技術を取り入れ、これまでにない表現で来場者を迎えるためにも、大規模なリニューアルが必要だった」とサンシャイン水族館の丸山克志館長。予算は30億円。2010年8月から1年間休館し、全面的にリニューアルすることが決まった。

検討:「水塊」をキーワードにハンデをはねのける工夫

 水族館プロデューサーの中村元氏をはじめ、飼育担当や現場で働くスタッフ、また水族館の運営には直接関わっていない人なども加わり、新しい水族館の在り方について意見交換を行った。その議論のなかで、「水中感」というキーワードが出てきたという。

 水中感とは「水の中から魚を見ているような、水の動きを感じられる展示」というイメージで、「社内では水塊(すいかい)という造語で呼んでいる。水塊を当館のテーマに掲げ、各飼育担当が中心となり水槽の見せ方を考えた」とサンシャインシティ コミュニケーション部の鳴海麻衣子課長代理は言う。来場者が水を感じられる水塊というテーマは、水族館の制約を突破するための方法でもあった。ビルの屋上にある水族館なので、水槽の大きさや重量に制限がある。そのため、大水槽といっても、地方にある水族館に比べると規模は小さい。そんな制約を感じさせないために、水塊というテーマで展示方法を検討した。

実施:制約を逆に武器とせよ。街並みを借景として活用

 リニューアル後の水族館のコンセプトは「天空のオアシス」で、水中世界を通じて癒やしや安らぎを提供する「都会の非日常空間」を目指した。各水槽は水塊をテーマに演出。「サンシャインラグーン」という大水槽は、水槽の形や照明の濃淡を工夫することで、限られた水深でも水のゆらめきを感じさせ、海がどこまでも続くような奥行きも表現している。

 屋外エリアにある「サンシャインアクアリング」は、直径約8mのドーナツ形の水槽だ。アシカが元気に泳ぐ姿を真下からも見せたい、というアイデアを実現。水槽を支える柱が太いと水中感が薄れてしまうため、水量を減らして軽くする狙いで真ん中をくり抜き、ドーナツ形にした。

 「天空のオアシス」をさらに完全なものにするために、16年9月から屋外エリアの一部を閉鎖。約10カ月の工事を経て、17年7月にリニューアルオープンした。その目玉となった展示の一つが「天空のペンギン」だ。屋上からは周囲のビルやマンションが見え、非日常感を演出しにくい。しかし、その制約を「どこもまねできない特徴」と捉え、“借景”にしたのだ。いわゆる「インスタ映え」する水槽が多いが、意図したわけではないという。「水塊をテーマに考えていった結果、自然と写真映えするデザインになった」と丸山館長は話す。

●サンシャイン水族館の来館者数の推移
●サンシャイン水族館の来館者数の推移
2011年のリニューアルオープン後、年間来場者数の目標は110万人超だった。だが、実際には約224万人(8月オープンのため、年度で換算すると162万人)で、前年の約3倍になった
リニューアルの極意
「制約」は新しい発想が生まれるチャンス! 制約を乗り越えるために議論を重ね、アイデアを出し合うことで、新しいテーマや今までにない表現方法が見つかる可能性がある。

(写真/丸毛 透、写真提供/サンシャイン水族館)