安心安全な食品を「Oisix(おいしっくす)」「らでぃっしゅぼーや」「大地を守る会」でネットやカタログ宅配で販売するオイシックス・ラ・大地。最近はPB商品を強化し、パッケージデザイン開発に力を入れている。同社のアートディレクターに、デザイン開発の実際について聞いた。
Oisixサービス進化室デザインセクション兼大地を守る会サービス開発室
アートディレクター
──「さんま飯の素」のパッケージをリニューアルして好調だと聞きました。リニューアルの背景は?
福嶋智美氏(以下、福嶋) 「Oisix」のブランド確立が狙いです。当社はネット通販に加えてリアルの売り場を増やしているため、今まで以上にパッケージデザインが重要になっているんです。
同時に、PB商品も強化しようと考えています。Oisixの中心顧客は30〜40代、それも小さなお子さんがいる方です。しかもSNSをよく利用するなど感度の高い方が多い。そういった客層に合わせて、商品にもっとOisixらしさを付加したい。そのためのPBです。
以前のパッケージデザインが悪かったわけではありません。歴史のある水産加工会社が作る本格的な商品でした。ただ、我々としてはそこに「安心安全」や「心地よい違和感」を加えたい。社内では「お客さまを裏切れ」という行動規範があり、「心地よい違和感」を感じられるデザインで、これを体現しています。
今回特に難しかったのが、心地よい違和感をどうつくるか、よくあるパターンからどう抜け出すか、というところです。いわゆる「おしゃれなデザイン」や「奇をてらったデザイン」はやろうと思えばできますが、それでは長続きしません。日常的に食べる商品ですし、おいしそうで、かつ、よくあるパターンとは違うもの。そこにたどり着くまで、苦労しました。
まず、デザイン案を数多く考えます。今回は50パターンくらい作りました。次に、それを絞り込んでいきます。いつもはここでうまく絞り込めるんですが、今回は「これ」というものが見つかりませんでした。
そこで、スタートに1回戻って、ストーリーで考えてみよう、と。プラスチック包装という制約を取り払ったら、この商品をどんなパッケージにしたいかを考えました。すると、私自身、人に贈りたくなるほどおいしい商品だと思っていたので、風呂敷や手ぬぐいに包んで和紙を巻いて……というイメージが浮かびました。そのコンセプトを現実の制約の中に再び落とし込んでいったんです。
その後も絞り込んでは広げる作業を続けました。最後に、さんまのイラストを横から縦に変えたことで、心地よい違和感が生まれ、しっくりきました。
パッケージを切り替えたのが7月30日。その後、月間売り上げは50%増となりました。10月までの3カ月単位で見ても45%増をキープしています。これまでさまざまな商品のリニューアルを手掛けてきましたが、自社店舗で売り場条件を変えずにビフォー・アフターの商品を販売し、売れ行きを検証するということを約1年かけて続けてきたので、リニューアルの勘所が分かってきました。
リニューアルでは、その商品が持っているデザインの構造を保ったまま変えることを心がけています。構造まで変えてしまうと、売り上げが下がることが多いんです。
──デザインに対する企業姿勢は?
福嶋 当社は2016年からgood design companyの水野学さんをクリエイティブディレクターに招いて、デザインに力を入れています。水野さんとの毎月の定例ミーティングには社長の高島も出席しています。
PBのパッケージデザインも高島が直接、決裁します。多くの人に稟議(りんぎ)を回すと、デザインがぶれたり丸くなったりしてしまうので、特にプライオリティーが高いものをトップが決めるのは良いことだと思います。
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