キリンビールの「キリン のどごし〈生〉」(以下、のどごし)の販売が好調だ。2018年6月にリニューアルを実施し、8月までの販売数量は前年比3.2%増。8月は年初計画比で約15%増産した。そのリニューアル成功の理由とは?
今回のリニューアルのポイントは、味をさらに改良し、のどごし史上最高の「キレ」を実現したことだ。リニューアル時のパッケージには「新!」のアイコンを大胆にあしらい、テレビCMも一新。リニューアルの認知についての調査では、認知した人の数が前年のリニューアル時の約2倍という結果が出たという。20代男性の支持も向上し、新たな購買層の開拓にもつながっている。
のどごしは、05年に発売した第3のビール(新ジャンル)。第3のビール市場では、のどごしは後発である。だが、のどごしのヒットに伴い、同市場は活性化。その中でのどごしは発売以来、13年連続シェア1位をキープし、キリンビールの酒類の中でも、最も出荷量が多いブランドとなった。
課題:市場が活況を呈し競合が増加。販売量が伸び悩む
実は、のどごしの販売量は11年の4776万ケース(1ケース大瓶20本換算)をピークに伸び悩んでいた。17年の販売量は4110万ケース。家庭用のビール市場において、第3のビールが占める割合は約6割と大きい。その分、競合商品も増え、流通大手のPBも台頭してきた。さらに、ここ数年は第3のビールと同価格帯の酎ハイの売れ行きが好調で、競合の一つになっている。「カテゴリー内だけでなくカテゴリー外との競争もあり、のどごしは苦しい状況が続いていた」。キリンビール マーケティング本部 マーケティング部 ビール類カテゴリー戦略担当の山岸納ブランドマネージャーはこう話す。
のどごしは発売以来、リニューアルを繰り返し実施しており、今回で10回目となる。改良、強化すべき点は何かについて調査を実施し、ブランドに元気がない理由を探るところから今回のリニューアルは始まった。
検討:店頭での取り扱いは多いが景色のようになっていた
のどごしは第3のビール市場をけん引し、今や「定番」といえる商品となった。そのため、店頭には一定のボリュームで商品が並んでおり、目立っているはずだ。しかし、調査では「のどごしは知っているが、自分には関係のないブランド」といった声が多く、「店頭で景色の一部のように思われ、ユーザーの視界に十分に入っていなかった」と結論付けた。
「ターゲットを絞り過ぎていたことが要因の一つ」と山岸マネージャーは言う。売れ行きが好調だった発売当初のテレビCMでは、明るく元気なブランドであることと、ゴクゴク飲める味を訴求していた。それは、現在もユーザーがのどごしらしさだと感じていることだったという。だが、直近のテレビCMは、40代のお父さんが頑張っている日常を描き、その共感からユーザーを獲得する戦略を採っていた。
「ビールを好きな人でも、父親ではない人には響かなかったのだろう。顧客が最も期待していたのは、味だった。と我々の伝えていることは、ずれてしまっていた」(山岸マネージャー)。そこで、原点に立ち返ることにしたのだ。
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