「記事クリップで売り上げが増える」ことを数字で検証

林:アプリには、「クリップ」と「チェックイン」という機能があります。「クリップ」は、ブログを閲覧して気に入った記事を後で見返しやすいようにボタン1つで登録する機能。チェックインは、お客さまが店舗でアプリを開くと、GPS(全地球測位システム)の位置情報で来店したことが記録される機能です。これで、ブログを見てから来店するまでの流れが1つのIDでつながって見えて、その人が買い物しているかどうかも分かるようになりました。

 その半年後の15年9月には、サービス満足度評価機能を付けました。買い物をした翌日に、お店を5段階で評価していただくことと、お客さまにポイントをお付けするというものです。買い物の評価と、それが再来店につながっているのかが見えるようになりました。来店前・来店中・来店後がつながって、どう購買コンバージョンに影響するのか分析できるようになってきたんですね。

アプリを軸にしたユーザーの行動分析(提供:パルコ)
アプリを軸にしたユーザーの行動分析(提供:パルコ)

クロサカ:実際にそれでどんなことが分かったんですか。

林:例えば、ある記事をクリップされたお客さまは、その記事を投稿したショップで買い物されるので、1つの記事が多くクリップされるほどお客さまが増えるし、お客さまの来店周期も早まるということが分かってきました。

 クリップをたくさんしてもらうためには、テナントに努力してもらわなくてはいけない。例えば写真に気を使っていただくとか、タイトルも工夫していただくとかです。そのために、たくさんクリップされている記事をヒントにして努力してもらいたいし、我々はそれをプラットフォーマーとして促していきたい。

 そのために16年の春からは、アプリにAI(人工知能)によるレコメンド機能を付けました。1日に数百件投稿されるブログ記事の中から、お客さまごとに気に入りそうな記事を優先順位を付けて表示するために、機械学習の仕組みを入れたんです。

 どのブランドの記事をよくクリップして、どのブランドで実際に買い物されるかの相関関係を基に機械学習で出し分けをしました。その結果、AI導入前の3カ月と導入後の3カ月を比較すると、記事のクリップ数が2割近く増えて、クリップ後の店舗での購買額も2割近く増えるという相関がはっきりと見えました。

AIレコメンド機能の導入前後での変化(提供:パルコ)
AIレコメンド機能の導入前後での変化(提供:パルコ)

 例えば、アプリユーザーの中でも、ある週に記事をクリップしたお客さまの翌週の来店確率は、クリップしていないお客さまよりも35%アップするとか、買い物した後に5段階評価をしていただいたお客さまは、そうでないお客さまに比べると翌週に買い物していただける確率が11%アップするといったことが分かっています。

クロサカ:そこまで結果が数字ではっきり出せるのはすごいですね。

林:12年に「Webの閲覧・来店・購買の動線には、しっかりとした相関がある」という仮説を立てて、検証して、さらにアプリ化することでブログ記事のクリップ件数、来店、買い上げ件数が分かるようになって、その効果を高めるためにAIを入れた。その順番でやってきて、ここまで結果が出せました。

 でも、ハタと気付いたのが、「お客さまが来店してから退館されるまで」の行動は、まだ理解が難しかったんですよ。

クロサカ:お客さまがPARCOに来館するまでは、少しずつ見えるようになった。でもそれによって、店舗での滞在中、つまり店内での様子が見えていないことに気付かれた、ということですね。

林:そうなんです。なので、店舗内でお客さまがどんな行動を取られているのかを理解するために、次はIoTを使おうということになった。その1つがカメラだったり、店舗内Wi-Fiのご利用履歴だったりと試行錯誤しながらやっています。

パルコ林直孝氏(右)と著者のクロサカタツヤ
パルコ林直孝氏(右)と著者のクロサカタツヤ