東京電力ホールディングス子会社で、家庭で発電した電力のP2P取引市場の実現を目指すのがTRENDE(東京・千代田)。同社代表取締役の妹尾賢俊氏とクロサカタツヤが「個人起点のデータビジネスの商機」を探る対談の前編では、現在の電力業界が抱える課題と、そこから生まれた自治体の新たな役割を語る。

クロサカ: 今回の連載のテーマである「個人起点のデータビジネスの商機」に関して、僭越(せんえつ)ですが、私が最近感じていることからお話しさせてください。今回、個人と触れ合うエンティティーは何か、という視点から考えてみたいのです。例えば、産業と個人は、サービスを提供する、受けるという関係ですね。あるいは、コミュニティーと個人。
産業とコミュニティーが直接データをやりとり
前者は既にデータのやりとりが発生している。あるいはもう少し大きな社会全体という意味でも、オープンデータの取り組みが加速したり、今後5Gの時代になって街中がセンサーネットワーク化されたりすれば、そうしたデータが該当します。この2つだけなら情報銀行の話って、割と筋の通った話になるかもしれない。でも何か足りないんじゃないかなと考えているんです。
個人から直接発生するデータ(を産業が利用するために)は、もちろん「通知と同意」が大前提です。一方で、この図の外周部分、「産業とコミュニティー」が、個人の同意抜きに周辺でデータをやりとりできて、初めて個人の生活空間はもう少しリッチになるのではないか。その結果として、楽しくて豊かなデータ流通社会になるのではないかと。
妹尾:まず、私たちの事業を説明すると、再生可能エネルギーの普及と、それを実現させるためのP2P電力取引プラットフォームの構築を目指しています。これから太陽光パネルや蓄電池が一般家庭に普及していくと、そこで電力が余る場合があります。そのときに私たちのプラットフォームを使って、そうした設備を持っていない家庭や、グリーンエネルギーを求めている企業に売れるようにしたい。そのためには例えばスマートメーターのようなデバイスをノードにしたブロックチェーンによる、P2Pネットワークが必要なんです。
実は、私たちが実装しようとしているこのシステムのアーキテクチャーは、クロサカさんのイメージに近いものだと思っています。ドイツには「シュタットベルケ」という、地域の電気、ガス、水道、交通などのインフラを担う、自治体所有の公社があります。それをイメージして、自治体が水道に加えて電気、ガスを供給する日本版シュタットベルケ、我々は地域新電力と呼んでいますが、その推進をしたいと思っています。
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