米ファスト・カンパニー

「これは世界最大のソーシャルフィードだというのが我々の見方だ」――。個人でも指定の動画を流せる巨大ビルボードが、消費主義の事実上の発祥の地である米国ニューヨークに誕生した。

米タイムズスクエアに設置された、誰でも動画を流せるという巨大ビルボード(出所/米TSXエンターテインメントのニュースリリースから)
米タイムズスクエアに設置された、誰でも動画を流せるという巨大ビルボード(出所/米TSXエンターテインメントのニュースリリースから)

 1880年代に遡るその発祥以来、米ニューヨーク・マンハッタンにあるタイムズスクエアは、常に広告で埋め尽くされた数々のビルボードの巨大なプールだった。世界で最も強力な企業は、世界で最も有名なステージで宣伝したがるが、人の関心を引こうとするこのレースがどれほど圧巻の光景を生むとしても、タイムズスクエアは依然、おおむね魂のない建物に取り囲まれた消費主義の事実上の発祥の地だと言える。

 だが、地平線の先には希望を抱く理由があり、それは1万8000平方フィート(約1672平方メートル)のビルボードの形をしている。ビルボードはもう勘弁という読者の声が聞こえてくるが、これは普通のビルボードではない。25億ドル(約3250億円)かけて建設され、タイムズスクエアの小売りと娯楽に革命を起こそうとしている46階建てのタワービル「TSXブロードウェイ」の丸みがかった角をくるむLED(発光ダイオード)スクリーンは、広告を流さない。「あなた」の個人的な動画を流すのだ。

1日36万人の目に留まる巨大ビルボード

 「The PixelStar(ザ・ピクセルスター)」と銘打ったプログラムは、2022年の大みそかに正式に立ち上げられ、全米6都市、世界111カ国以上から多くの人が、タイムズスクエア有数の巨大スクリーンで自分の15秒動画を配信する枠を予約した。このスクリーンには継ぎ目なく統合された2枚のLEDドア(高さ約7.6メートル)が組み込まれており、扉を開くとタイムズスクエアを見下ろす屋外ステージが現れる。

 スクリーンはいずれ、コンサートやその他諸々のプログラムを放送するために使われるが、差し当たりは誰でも遊べる道具だ。利用したい人はただTSXアプリをダウンロードし、動画を流す予定を組み、文字通り15秒間の“名声”を得るために40ドル(約5200円)払うだけでいい(比較のために言えば、タイムズスクエアの大型スクリーン上での伝統的な宣伝広告は、15秒CMを20回流す料金が500ドル[約6万5000円]からスタートする。また最近では、24時間の契約で1時間につき15秒間、写真を表示する150ドル[約1万9500円]のサービスもある)。

 AI(人工知能)と人間の組み合わせが投稿された動画をすべてチェックし、(あらかじめ定められた)コンテンツ規則を満たしていれば、あなたの動画が一瞬、タイムズスクエアを乗っ取る。コンテンツ規則には、1日36万人もの人の目に留まるスクリーンに当然期待されるものが含まれ、ヌードや暴力、不快なコンテンツはご法度だ。一方、思いも寄らないような規則もある。伝統的な広告は禁止されるのだ。

 「あのスクリーンでは、いわゆる一般企業に15秒間を買ってもらいたくない」。米TSXエンターテインメントの共同創業者で、共同CEO(最高経営責任者)を務めるニック・ホルムステン氏はこう話す。「これは世界最大のソーシャルフィードだというのが我々の見方だ」。

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