米ファスト・カンパニー

広告業界で長いキャリアを培い、今は自ら創業した独立系広告会社を経営する “業界のベテラン”であるポール・ベナブルズ氏に、広告ビジネスはどうやって2023年を乗り切るべきかを聞いた。

広告クリエイターは2023年、広告主から「クビ」にされる恐怖と戦い続ける必要がありそうだ(画像はイメージ、出所/Shutterstock)
広告クリエイターは2023年、広告主から「クビ」にされる恐怖と戦い続ける必要がありそうだ(画像はイメージ、出所/Shutterstock)

 向こう6カ月以内に米国のマーケターの約40%が、契約している広告会社をクビにするつもりだ――。このデータの出所は広告会社とブランドを仲介する企業セットアップによる2022年11月の調査で、数社挙げるだけでもコカ・コーラやデルタ航空、ワーナー・ブラザーズ、UPS、ディスカバリー、ホームデポといった米国の大手企業から話を聞いてまとめたものだ。

 この数字と同じくらい懸念されるのは、契約解消の原因をめぐる広告主と広告会社の見解の相違だ。広告会社は迫りくる解任の最大の理由として、ブランド側の予算削減とマーケティング部門のトップ交代の2つを挙げる。一方、広告主企業自身は、広告会社を今年クビにする最大の理由は、戦略的アプローチの欠如だと話している。予算削減は大きな理由ではなく、リストの下位8位にとどまる。

 23年に入った今、双方が自分たちは正しかったかもしれないと感じている。米国のアマゾン・ドット・コム、セールスフォース、ペプシ、ドアダッシュ、ウォルト・ディズニーといった多岐にわたるブランドではもちろんのこと、米アノマリーや米国とオランダに本社を置く72アンドサニーといった人気広告会社でも、新たな人員削減策が発表され、すべてが流動的になった兆しが見えるからだ。

広告不況を乗り切ってきた大御所

 この不確実性の中で繁栄を確実なものにするためにはどうすればいいか──。このことを探るため、ポール・ベナブルズ氏に接触した。同氏は01年の景気後退の真っただ中に米サンフランシスコで独立系広告会社ベナブルズ・ベル&パートナーズを創業し、自動車、金融サービス業界のクライアントがかなり多かったため、08年の不況を切り抜けた人物だ。

 経済の先行きが予測不能な時代の中で、不安を抱かず、割と平然としていられる人がいるとすれば、それはさしずめベナブルズ氏だろう。本人が言うように、「この広告会社は1ドルの価値を知っている大恐慌時代のおばあちゃんとして誕生した」からだ。

 ベナブルズ・ベル&パートナーズにとって、22年は間違いなく、まだら模様の年だった。15年間にわたって数々の賞を受ける注目の広告作品を生み出したドイツのアウディの仕事を離れる一方で、米国の外食大手チポトレ・メキシカン・グリルでは効果的な広告を制作し続け、ドイツのフォルクスワーゲン(VW)の新しい電気トラックブランド「スカウトモーターズ」と新たに契約を結んだ。

 また、米アクセンチュア・ソングや英WPPのような巨大広告会社が、新たに買収した広告会社をさらに統合・再編している時代にあって、米国の独立系広告会社のオーナーかつ非公式な「学長」として存在感を増すベナブルズ氏の話を聞きたかった。23年は独立系広告会社、とりわけクリエイティブエージェンシーにとって、また広告業界全体にとって、どんな年になるのだろうか。

膝がガクガクし、夜中に汗かく恐怖の年に

 ベナブルズ氏は、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)から抜け出し、22年は好況に沸く1年になると見ていた。だが、現実は少々違った。同氏は「(22年という年は)長くつらい歩みだった」と振り返る。「新たなビジネスと大型営業案件をいくつか勝ち取ったが、思っていたような収入やプログラムが実現せず、それがこの1年に水を差した。このため22年については、本当にとことん戦い抜くモードだった。水はかつてないほど濁っていて、一向に澄む気配がない」(ベナブルズ氏)。

 ベナブルズ氏によると、広告会社と企業のマーケターはトレンドを追うのをやめ、現実世界の事業目標に集中するようになる(あるいは、そうすべきだと言う)。「株価は乱高下し、戦争があり、インフレがあり、金利のゲームがある。サプライチェーン問題もまだ残っており、景気後退という言葉を聞いただけでも、マーケターは恐怖で膝がガクガクし、夜中に汗をかく」と同氏は話す。

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