米ファスト・カンパニー

キュレーター経済の台頭から短編動画によるショッピングまで、さらに成長が見込めそうなクリエイター経済を形作るトレンドを、2023年を見据えて紹介する。

2023年のクリエイター経済の規模は、さらに上向く可能性も(出所/Shutterstock)
2023年のクリエイター経済の規模は、さらに上向く可能性も(出所/Shutterstock)

 2022年はまたしても全面的に波乱に満ちた1年だった。だが、景気後退が忍び寄り、米国でTikTokを禁止しようとする議員の圧力が強まり、米Twitterを買収した起業家のイーロン・マスク氏がまさにイーロン・マスク氏であり続ける中でさえ、クリエイター経済は驚くほどしっかりと持ちこたえた。

 調査会社インフルエンサー・マーケティング・ハブによると、クリエイター経済の価値は現在164億ドル(約2兆1320億円)と評価されており、21年に比べて19%拡大した。では、このエネルギーは23年に入ってからも続くのか。クリエイター経済が23年にどこへ向かうのか理解するため、米ファスト・カンパニー(FC)のポッドキャスト番組「クリエーティブ・コントロール」で専門家数人に話を聞いた。

リアルであること――それこそが本当に求められる!?

 「オーセンティシティー(本物であること)」は今となっては過剰な流行語のように思えるかもしれないが、視聴者が求めているものを指す言葉としては、この言葉が指し示す“心理”にはまだ真実味がある。芸能事務所ユナイテッド・タレント・エージェンシー(UTA)の一部門で、データとデジタル戦略に特化したUTA IQの研究によると、米国の消費者の2人に1人はエンターテインメント制作の舞台裏を見ることに興味を持っている。

 UTA IQのタレント戦略を率いるステファニー・スミス氏は「これが、タレントとクリエイターが自ら自分自身の生活を明かし、従来は前代未聞だったレベルの生のオーセンティシティーを示すことを望む(視聴者の)願望、さらには要求にさえ発展した」と説明する。

 例えば、フランス発のSNSアプリ「BeReal(ビーリアル)」の22年の成功を見るといい。日中にランダムに自分自身と周囲の様子そのままの写真を撮影するようユーザーに通知するアプリは19年から存在していたが、調査会社アップトピアによると、累計のダウンロード総数の65%、件数にして4330万件は22年のものだった。

 23年を迎え、オーセンティックである必要性はコンテンツに「あったらよい」ものから「必要」なものに移行するとスミス氏は見ている。

 「私たちが目にしているのは、オーセンティシティーがコンテンツとコンテンツクリエイター全体に対する期待になるにつれ、こうしたトレンドが他のソーシャルメディアプラットフォームにも波及している様子だ」とスミス氏は話す。

マスアピールの終わり

 過去数年間で、マイクロクリエイターやナノクリエイター、つまりフォロワー数が数百人、数千人程度の人たちが意味のある形でクリエイター経済における縄張りを主張し始めた。マーケターが学んだように、登録者数とフォロワー数は重要だが、エンゲージメント率はさらに重要だ。各種調査は、比較的フォロワー数が少ないクリエイターの方が往々にしてエンゲージメント率が高いことを示している。

 フォロワー数の少なさと並行するのは、多くの場合、1つのトピックに対する焦点の狭さだ。そしてインターネットが何かを証明したのだとすれば、すべてのものの周りにコミュニティーが見つかるということだ。

 「このニッチなコミュニティーとサブカルチャーの台頭は、今後も拡大し続ける最大のトレンドの1つであり、最も重要なものだ」とスミス氏は言う。「あまりにも多くのものが存在するため、万人にアピールするだけではもう十分ではない。変化を起こすためには、(ニッチであっても)特定の視聴者に対してアピールしなければならない」。

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