米ファスト・カンパニー

Web上を駆け巡って素材をかき集め、学習し、指定の条件にあった画像を生成する「DALL・E2」のようなAI(人工知能)イメージングツールは既に当たり前に使われつつあるが、企業にとって新たな機会と厄介な問題を生み出している。

米ハインツが、自社ブランドと「ケチャップ」がどれほど同義になっているかを、AI画像生成ツールを使って検証したところ、ハインツ風の画像ばかりが表れた。楽しい遊びではあるが、同時に企業にとって難問も生じさせている(出所/Shutterstock)
米ハインツが、自社ブランドと「ケチャップ」がどれほど同義になっているかを、AI画像生成ツールを使って検証したところ、ハインツ風の画像ばかりが表れた。楽しい遊びではあるが、同時に企業にとって難問も生じさせている(出所/Shutterstock)

 数カ月前、文章の指示に基づいて画像を生成するAIサービスがインターネットを席巻し始めたとき、米ハインツは自社ブランドがどれほどケチャップ全般と同義になっているか試してみることにした。

 ハインツは代理店リシンクと組み、画像生成サービス「DALL・E2(ダリ・ツー)」に対し、「ケチャップ」の絵について既存の画像とは異なる美的様式(例えば「ルネサンス」「印象派」「ストリートアート」など)によるバリエーションを描くよう指示した。その結果は、スタイルこそ違うものの、すべて紛れもなくハインツ風で、ハインツのラベルの独特な形を描き出していた。楽しい遊びであることを別にすると、これは強烈な自慢になり、ハインツブランドの力を見せつけたことになる。

 だが、この試みは最近大きな関心を集め始めている、商標権者にとっての潜在的な問題も示唆していた。全般的に言って、こうしたAIシステムはIP(知的財産)を大して考慮せずに構築されたように思えるからだ。

ネットを席巻するAIサービス、規制は相変わらず後手

 一部の観測筋はしばらく前から、この問題点を提起してきた。文章を基に画像を生成するDALL・E2のようなツールは、Web上を駆け巡り、何億もの文章とイメージの関連性を「学ぶ」ことによって「訓練」される。2022年、米IT系メディア「テッククランチ」のリポートは、DALL・E2の開発元である米オープンAIがこの学習プロセスからポルノと複製画を「除外した」と指摘した。

 だが、このツールはロゴや商標登録されたキャラクター、その他のIPを含む画像を生成することができる。例えば米ベストバイで買い物をしているスポンジ・ボブ、映画サイコに出演するホーマー・シンプソン、古代ローマのスパイダーマン、米アマゾン・ドット・コムで買い物するサンタクロース、あるいはロナルド・マクドナルドの「怒れる群衆」が労働条件に対して抗議するカラヴァッジオ風の絵といった具合だ。

 DALL・E2と、研究機関ミッドジャーニーやオープンソースのステーブル・ディフュージョンによって開発された同様のツールは、ますますアクセスしやすくなり、人気も高まっている。画像生成の次に到来するのは動画の生成で、AIによって生み出されるイメージの質は急激に向上している。米ニューヨーク・タイムズ紙の技術コラムニスト、ケビン・ルース氏はしばらく前に、「数年後には、我々がインターネット上で出くわす写真、動画、文章の大多数がAIによって生成されたものになるかもしれない」と推測していた。

 いつものごとく、この技術を管理するために一定のパラメーターを設ける規制戦略に少しでも似た取り組みは、こうした展開に大きく後れを取っている。既に、AIによって生成された画像は「Shutterstock」や「iStock」「Adobe Stock」のようなストック写真サイトで普通に見かけるようになっている(一方、米ゲッティ・イメージズは「対処されていない権利問題」を引き合いに出し、AIによる画像を禁止した)。こうした画像の著作権と所有権を取り巻く問題は、まだ明確な答えを模索している段階だ。

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