
米ウォルマートは既に、顧客が多様なモデルに洋服を着せた様子を見られるようにしている。今度は特殊なセルフィー(自撮り写真)に本物らしいアパレルを着せたイメージを見せてくれる。
米小売り大手ウォルマートの買い物客が、自宅から出ることなく、バーチャルに洋服を試着できるようになった。
ウォルマートのiOS版アプリで2022年9月半ばに公開された新機能は、顧客がアップロードした写真を使い、個々の顧客が着たときに洋服がどんなふうに見えるか表示する。「Be Your Own Model(自分のモデルになろう)」という名の技術は、機械学習技術を活用し、潜在的な買い手に対して、ただ単に衣類の画像を重ねる以上のことをもたらす。
「紙人形みたいな画像を見せるようなことにはしたくない」。ウォルマート米国部門のアパレル・プライベートブランド担当エグゼクティブ・バイスプレジデント、デニース・インカンデラ氏はこう話す。「(今回は)それよりも格段に高度な画像を示せている」。
Be Your Own Modelは、もともとは地球の地形図作製に使うために開発された技術を利用する。現実的な影や色味、さらにシミュレーションした生地のたわみまで含め、洋服が実際に体にどうフィットするかを、顧客が確認できるようにする。
地形図作製に使われる高度な技術
「地形図を描くために使われている技術を見て、次に地形図の上に重ねる地物(ちぶつ)を見ると、顧客が服を着たときのイメージの作成とよく似ていて、非常にアナログだ」。技術統括会社ウォルマート・グローバル・テックの新規事業・新技術担当シニアバイスプレジデント、シェリル・アイノア氏はこう説明する。「人のイメージを、いわば地形図として作成するために、かなり高度な機械学習モデルを使っている」。
買い物客は同じアイテムの異なるバージョンを比較することもでき、商品を注文して返品したり、ウォルマートの試着室に何度も足を運んだりせずに、さまざまなサイズや色を試すことができる。
新機能は、買い物客が自宅の快適な環境で商品を試せるようにするためにAR(拡張現実)を活用する、ウォルマートの取り組みの最新事例だ。同社はこれまでに、ある空間に置いたときに家具がどう見えるかをビジュアル化するツールや、会員制卸売店「サムズ・クラブ」で売られているメガネをバーチャルにかけるツール、自分に似たモデルが着たときに洋服がどう見えるかを確認するツールを投入してきた。
この最後の「Choose My Model(自分のモデルを選ぼう)」機能については、顧客からより多くの選択肢を求めるリクエストが相次ぎ、提供開始時の50モデルから120モデルに数を増やしている。買い物客が自らモデルになり、バーチャルで洋服を試着できるようにすることは、論理的に次に実現すべきステップだったとインカンデラ氏は話す。
「何度も何度もリクエストされたことが、モデル数を増やすことだった」
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