
新型コロナウイルス感染症の拡大と軌を一にして、個人配達事業主を活用した食料品の即日配達サービスで成長し、広く知られるようになったインスタカート。 2022年内に、米カリフォルニア州アーバインにおいて、通信網に完全につながったコネクテッド店舗をオープンする。
米インスタカートが2022年9月19日、食品スーパーをスマート化したい小売企業向けに、新規および既存の店舗内技術のパッケージ「Connected Stores」を発表した。
米国とカナダの小売企業がアラカルト式で導入できる機能一式は、実店舗での買い物体験をよりシームレスで迅速、かつパーソナライズされたものにするという考えに基づいている。インスタカートのアプリの買い物リストと店舗内のスマートカートを同期させるAI(人工知能)搭載カート「Caper Cart」の新バージョンのほか、「Carrot Tags」という名の電子棚札、スキャン・決済機能、部門別注文システム、在庫切れに関する情報などがそろえられている。
「これらは誰もが共感できるリアルな消費者問題を解決する技術だ」。インスタカートCEO(最高経営責任者)のフィジー・シモ氏は、米ファスト・カンパニーにこう語った。「人はレジで列に待つのが好きではない。求めている商品について、もっと多くの情報があることを好む。こうした商品を本当に素早く見つけたい。私たちが用意した機能のすべてが、技術による対処によって、利用客の本物の“苦痛”を解消している」。
大型投資をしないで店舗をスマート化
インスタカートは米グッド・フード・ホールディングスと組み、カリフォルニア州アーバインにある同社傘下のスーパー「ブリストル・ファームズ」で、初の完全コネクテッド店舗を22年中にオープンする構えだ。米ウェイクファーン・フードと米シュナックス・マーケットも今後数カ月内に、それぞれCaper Cart とCarrot Tagsを店舗に導入する。
インスタカートの経営幹部らによると、これらの技術は小売店側が欲しいものだけを選んで購入できるうえに、システムが既存のハードウエアソリューションをサポートしているために、導入する小売企業はシステム統合や店舗改装に何百万ドルもつぎ込む必要がない。「これらの技術すべてを導入しても、小売企業が大型投資を強いられるのを避ける形にしている」とシモ氏は話す。それでも、導入実験では投資の回収が実証されたと言い、「利用客がこうした技術を使うときには、支出が増える傾向があることが分かった」(シモ氏)と付け加えた。
今回発表したパッケージは、インスタカートが21年に3億5000万ドル(約504億円)で買収したセルフチェックアウト型ショッピングカートメーカー、米ケイパーAIの技術を土台として生まれたものだ。同社のスマートカートは全米各地に散らばった、数としては一握りの店舗で既に試験的に導入されているが、最新バージョンは従来機よりも軽く、スリムで、かつカートの容量が従来バージョンより65%大きくなっている。
Caper Cartは通常のショッピングカートと似たような形だが、タッチスクリーンと計量器が装備され、買い物客が手作業で商品をスキャンしなくてもいいようにセンサーが搭載されている。ユーザーはただ商品をカートに入れていき、通信網につながったタブレットによって決済を済ませ、店を出る(チェックアウトする)ことができる。小売企業はカートを一つずつ充電する必要はなく、複数のカートを並べ、(接触式の充電器を使うことで)1つのプラグで全部を充電できる。
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