米ファスト・カンパニー

民泊仲介大手である米エアビーアンドビーの宿泊施設や貸別荘といった多くの短期レンタル施設がネットワークされ、商品を展示するための新たなショールームになった。「ネーティブリテール」をうたう新興企業、米ミノアンのおかげだ。

米ミノアンの目指す世界を消費者の側から見ると、貸別荘のような短期レンタル施設の中で、ホストがそろえた家具やインテリアを気に入ったら、その場でオンラインにより購入できるわけだ。確かに便利ではある(出所/Shutterstock)
貸別荘のような短期レンタル施設の中で、ホストがそろえた家具やインテリアを気に入ったら、その場でオンラインにより購入できる世界を、米ミノアンは構築した(出所/Shutterstock)

 ブランドは長年、ある中核的な小売り問題を解決するために奮闘してきた。それは、どんな場合に消費者とオンラインで結び付いた方がいいのか、どんな場合に実店舗の体験を提供した方がいいのか、という問題だ。

 だが恐らく、この問いには3つ目の答えがある。消費者に店頭の棚かWebサイトのどちらかを見てもらう代わりに、潜在的に興味がある商品やブランドと一緒に暮らしてもらえるとしたら、どうか――。

IRLプロダクトプレイスメント

 これを「IRL(イン・リアル・ライフ)」のプロダクトプレイスメントだと考えればいい。休暇を取ってエアビーアンドビーで借りた家に滞在したとき、そこにおしゃれなコーヒーグラインダーがあり、携帯電話を数回タップするだけで同じものを注文できるのだ。周りにある他の多くの商品も、同じように注文できるかもしれない。米ベアマットレスの寝具、米ウエストエルムの肘掛け椅子、地元の焙煎(ばいせん)業者のコーヒー、おしゃれなせっけんやシャンプー、コーヒーテーブルに飾られているアート色の強い書籍、Wi-Fiスピーカーなどだ。

 ベンチャーキャピタル(VC)の出資を受けた新興のスタートアップで、まさにこのビジョンを追求している米ミノアン(Minoan)は、これを「ネーティブリテール」と呼ぶ。同社は既に1万軒近い施設(主に貸別荘などの短期レンタル施設だが、ブティックホテルも一部ある)の「ネットワーク」を構築済みで、休暇用の宿泊施設を事実上のショールームに変えることに役立つ商品を、ホストが数百社の参加ブランドから選んでいるという。

 読者は、物をもっと買うように誘いかけてくる新たな方法を求めていないかもしれない。だが、ミノアン共同創業者で社長でもあるマーク・ホストフスキ氏は、ネーティブリテールと呼ぶこのサービスについて、「スクリーンと棚」の先へ進もうとするブランドの正当なニーズを満たしていると主張する。同氏に言わせると、「これまでの小売りを巡る状況には、どこか隙間があると感じていた」。

 米メタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)と米グーグルがオンライン広告市場を支配しており、ブランドは自社の商品を消費者に対して思うように訴求できるわけではない。そのうえ、カナダのShopify(ショッピファイ)や中国のアリババ集団などが提供するさまざまなツールがオンライン上で新規ブランドを立ち上げるための障壁を下げたことで、EC市場は競争が激烈になり、多くのブランドにとって、“目立つこと”が困難になった。

 一方、リアルな小売店は運営コストが高いため、売り場面積当たりの収入を最大化するよう設計されている。これは必ずしも、ある特定の商品を輝かせるような仕組みではない。

 「最近では、消費者の目の前に自社の商品を思うように並べるのが難しい」とホストフスキ氏は言う。「それに、商品というものは本来想定されている使い方、つまり現実世界において体験してもらった方が、(消費者にとって)理解が早まる」。

ブランドが消費者の目に触れる新たな方法

 ネーティブリテールの仕組みはこうだ。例えば、民泊仲介大手の米VRBO(バーボ)を介して手配した部屋に入った消費者が、その部屋のホストが部屋に飾っていたサイドテーブルの見た目やキャンドルの香りが本当に気に入ったとしよう。すると、QRコードと「何か気に入ったものが見つかりましたか」と書かれた室内の標識に気づく。QRコードをスキャンすると、室内に置かれたものの中からミノアンが開発したプラットフォーム経由で買えるすべての商品のリストが出てくる。

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