米ファスト・カンパニー

ファッション業界のプレーヤーがこれほど大胆に同業他社を批判するのは珍しい。中国発のSHEINが成長のために推し進める過剰消費と使い捨てファッションは、ファッション業界の未来を暗くするものだという強い確信が、この批判の裏にある。

中国発の新興アパレルSHEIN(シーイン)は米国市場に進出し、この5年で急成長を遂げた(出所/Shutterstock)
中国発の新興アパレルSHEIN(シーイン)は米国市場に進出し、この5年で急成長を遂げた(出所/Shutterstock)

 ファストファッションが地球を破壊していることに世界が目覚め始めた頃、新たなプレーヤーが出現した。

 今や1000億ドル(約13兆円)の企業評価額を与えられている中国のファストファッション小売り大手SHEIN(シーイン)は、ファッションメディアから無駄な過剰消費を助長しているとしてやり玉に挙げられた。そして今度は米スレッドアップが争いに加わった。

 カリフォルニア州オークランドに本社を構え、古着委託販売サイトを運営するスレッドアップは2022年6月下旬、ベイエリアの顧客にプッシュ通知の案内を送り、その週末にサンフランシスコに出現するシーインのポップアップショップをボイコットするよう呼びかけた。ファッション産業のプレーヤーが同業他社に対して、このような直接的な攻撃を仕掛けるのは極めて稀(まれ)だ。

 「これは間違いなく、スレッドアップにとって初めてのことだ」。スレッドアップの統合マーケティング担当バイスプレジデントを務めるエリン・ウォレス氏はこう話す。「会社としてシーインが大きな問題だと考えているという意思表示だ」。

SHEINの驚異的な成長と環境への影響

 シーインは08年に中国で創業されたが、米国市場に進出してからのこの5年間、驚異的なペースで成長した。売上高は18年の20億ドル(約2600億円)から21年の157億ドル(約2兆410億円)へ急増。今や1000億ドルに上る企業評価額は、ファストファッションの草分けであるスウェーデンのヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)と、ZARA(ザラ)などを展開するスペインのインディテックスの株式時価総額の合計を上回る。22年5月には、米国のアプリストアで米アマゾン・ドット・コムを抜き、ショッピングアプリの分野で首位に立った。

 シーインのビジネスモデルの柱は、一つにはスウェットショップ(“搾取”工場)を使っているために、ファストファッションの競合企業よりも大量に、かつ質の低いトレンディーな洋服を世に送り出し、販売に結びつけられることだ。英国のファッションデータ分析企業エディテッドの調べでは、22年1~4月期にシーインは31万4877種類の新作を発売した。この数は、同時期のH&Mの4414種類、ZARAの6849種類という新作数をはるかに上回るものだ。

 シーインはSNS(交流サイト)上でのマーケティング術も習得し、Z世代市場を捉えた。この事実は、インフルエンサーがTikTokやInstagramでシーインの洋服を一度に何十種類も着てみせる「SHEIN haul」として知られるようになった行為にはっきり見て取れる(シーインにコメントを求めたが、返答がなかった)。

 この驚異的な大量生産は、地球にとって壊滅的な影響を及ぼす。これほど大量の衣類を生産し、世界中に配送するには、莫大な資源を要する。また、大半のアイテムを15ドル(約1950円)以下で販売することで、消費者は洋服を「使い捨て商品」として考えるように促される。

 「スレッドアップが目指すゴールは、我々が生産するより多くの洋服を再使用している未来を築くことだ」とウォレス氏は言う。「シーインのようなプレーヤーがいると、そのゴールははるか遠い先にあるように見える。シーインは従来とまるで違う規模で過剰消費と使い捨てファッションを促している」(ウォレス氏)。スウェットショップを活用している点については触れるまでもない。

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