
米ツイッター社内に置かれている「ブルースカイ」と称される社内グループは、P2P(ピア・ツー・ピア)とフェデレーション(相互運用:複数のサービスで認証情報を共有すること)、ブロックチェーン(分散型台帳)の技術を交ぜたような、新しいネットワーク構造を模索している。
2019年の暮れ、当時ツイッターCEO(最高経営責任者)だったジャック・ドーシー氏が、自分のツイートやその他コンテンツを管理する権限をユーザーに与え、プラットフォーム上で発言が許されることと許されないことを決めるツイッター自体の判断への依存度を下げるために、同社SNSを分散化する方法を模索していると発表した。
その狙いは、ブロックチェーンかそれと似た技術を使い、ツイッターを電子メールのようにすることだった。つまり、ユーザーが「クライアント」(ツイッターサービスのフロントエンドのような役目を果たすソフトウエアプログラムないしWebプログラムで、メールソフトとして「Gmail」または「Outlook」を選択するのと似た仕組み)を選び、共通プロトコルによって異なるクライアントを使うユーザーとツイートやメディアを共有できるようにする。ある特定のクライアントのユーザーは、自分たち独自のコミュニティー基準と規則を定めることもできるかもしれない。
ブルースカイが描く新たなネットワーク
「ブルースカイ」と総称される構想と研究チームは22年の今も健在だ。研究チームはまだ新しいネットワークや暫定的なプロトコルを発表していないが、「何か」を構築している。だが、それはブロックチェーンネットワークではない。厳密には違う。
「我々は自分たちが構築しているものをフェデレーション(相互運用)型やP2P(ピア・ツー・ピア)型ネットワーク、あるいはブロックチェーン(分散型台帳)型ネットワークとして描写していない。どのカテゴリーにもしっくり収まらないからだ」。ブルースカイは22年4月6日のブログ投稿でこう説明した。「P2Pの特徴を備えたハイブリッドフェデレーション型ネットワークとして描写できるかもしれない。我々のチームは以前、有力な分散型Webプロトコルとブロックチェーンネットワークを構築しており、これまでに見た中で一番いいものを合成して何か新しいものを作ることに取り組んでいる」。
研究チームは現在、分散型ネットワークの3つの特徴に懸念を抱いていると書いた。ポータビリティーと規模と信頼だ。
「ポータビリティー」とは、ユーザーが自分のツイートとライク(いいね)とフォロワーを第三者のツイッタークライアントに移管する能力を意味する。ツイッターのブルースカイグループを率いるジェイ・グラバー氏は22年4月15日のツイートで、「オンライン上のアイデンティティーと人間関係を、メールアドレスや電話帳、パスワードキーチェーンと同じように自分に帰属するものにするのは技術的に可能だ」と語った。
「規模」は、ツイートを世界中のユーザーに広く配信する(分散型)ネットワークの能力を指す(ブロックチェーンは今のところ、それほど大きな通信容量を扱う能力を実証するには至っていない)。そして「信頼」とは、どのツイートが自分のフィードに盛り込まれ、どのツイートが除外されているか、それがなぜかについて、ユーザーにより高い可視性を与えることを指す。
イーロン・マスク氏の登場
著名起業家のイーロン・マスク氏がツイッターの買収に公然と関心を示す中、このブログ投稿は買収関連のニュースとツイートの波にかき消されたかもしれない。それでも、この2つの出来事は密接に関係している。
マスク氏は、ツイッターは透明性を高めるべきだと考えており(最近のTEDトークのインタビューでは、「コードは『GitHub[ギットハブ、プログラム共有サイト]』で公開されるべきだ」と語った)、言論の自由を統制する中央の管理チームへの依存度を下げたいと思っている。ドーシー氏と同様、マスク氏もブロックチェーンへの関心を示したが、その一方で、自分の会社には中央集権的な厳しい統制を敷いてきた。
そして何よりマスク氏は、ツイッターが文化にどれほど大きな影響を与えているとしても、今よりはるかに収益性の高い企業であるべきだと考えている。ツイッターのユーザー数はここ何四半期も大きな伸びを見せていない。より大きなユーザー権限と新たなコンテンツモデレーション制度を備えた新しいタイプのネットワークは、(ツイッターが置かれている“停滞”気味の)この状況を変えるかもしれない。
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