
主役に異変?――。暗号資産とNFT(非代替性トークン)市場がけん引する形で発展し続ける「Web3(3.0)」だが、今のままでは勢いに陰りが生じるかもしれず、勢いを持続するには主役交代が望ましいかもしれない。次の主役として期待を集めるのは、メタバースなのだろうか?
1年前の2021年春、暗号資産とNFT(非代替性トークン)が一気に主流になった頃は、ブロックチェーン技術が持つ斬新さだけで、人々がその将来性について大騒ぎする価値があった。だが、それから1年たった22年春、人々はブロックチェーン技術がもたらす次の展開を探し求めているようだ。そして、その期待に合致するのはメタバースかもしれない。
米ブロックチェーン分析会社のナンセンの報告書によると、22年第1四半期(1~3月期)には、NFTのうちメタバース関連が市場をけん引し、仮想世界における土地・不動産、アバター、資産への投資が平均129.4%のリターンを生んだ。このリターン幅は、全体的に価値が低下したゲーム系NFTと芸術系NFTのみならず、「アズキ」や「クローンX」「ドゥードルズ」などナンセンが「ブルーチップ」として分類する一流NFTプロジェクトがもたらしたリターン(50.9%)をも大きく上回った。
まるで開拓時代の西部、お堅い銀行も進出
だが、同時にメタバース関連のNFTはボラティリティー(変動性)が最も激しく、振れ幅は前述の一流NFTプロジェクトの4倍近くに上った(一流NFTプロジェクトはある程度試練に耐えてきたため、最も相場が安定していた)。実際、メタバース系NFTの買い手の多くは「投機家のように振る舞っている」とナンセンは書いている。進化し続ける仮想世界でゴールドラッシュが起きたようなもので、金鉱を探す個人と著名企業が、新たな「ワイルドウエスト(米西部開拓時代の無法地帯)」にこぞって所有権を確保している。
イタリアのグッチ、ドイツのアディダス、米国で誕生した子供向けキャラクターの「ケアベア」、米アタリのような話題のブランドは、既に仮想世界に土地を確保している。だが、こうしたブランドと並び、例えば「ディセントラランド」(店舗スペースが数百万ドルで売られた巨大な仮想ショッピングモール)に銀行ラウンジを構えた米JPモルガン・チェースや、仮想空間「ザ・サンドボックス」で銀行口座を開設できるようにした英HSBCのように、“お堅い企業”もメタバースに参加している。
この記事は会員限定(無料)です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー