
米ハーバード大学の研究者がまとめた新たな報告書は、ロシアのウクライナ侵攻に関する誤情報が、TikTok上でなぜこれほど危険な形で拡散するのかを説明している。
米ハーバード大学の研究チームが発表した新たな報告書は、動画投稿アプリ「TikTok」が依然、ウクライナ侵攻に関する誤情報と偽情報にあふれていることを明らかにし、こうした情報がなぜ、これほど容易に拡散するのかを説明している。
TikTokを使う一般人から“笑いの達人(そして時に天才)”をこれまで発掘してきたツールや機能が、大々的に誤情報を拡散するためにコンテンツを加工することにも利用できると研究者らは指摘する。
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「TikTok, The War on Ukraine, and 10 Features That Make the App Vulnerable to Misinformation(TikTokと、ウクライナ侵攻と、同アプリを誤情報に対して無防備にする10の機能)」と題した報告書は、誤情報の研究者として名高いジョーン・ドノバン博士率いるハーバード大ショレンスタインセンター(メディア・政治・公共政策のための研究センター)のプロジェクト「技術と社会的変化(TaSC)」から発表された。
研究チームはロシアがウクライナに侵攻した2022年2月24日に、ウクライナに関するTikTok投稿を監視・記録し始めた。研究チームによると、同年3月9日時点で、「#ukraine」とタグ付けされたTikTok動画は計268億回再生された。
研究者らは、ユーザーはもちろん経験豊富なジャーナリストでさえ、TikTok上で真実と噂の違いを見極めるのが難しいと指摘する。
「我々は皆、例えばディープフェイクなど、メディアを巧みに加工するために使われるツールがあることを熟知しているが、このアプリは、アップロードしようとしているコンテンツを“操作”するように促すと言っていい動画編集ツール一式がビルトインされている点で類を見ない」。報告書の執筆に携わった研究フェローの1人、ケイリー・フェイガン氏は、米ファスト・カンパニーにこう語った。「TikTokのアプリは、動画の使い回し利用を促す(機能を持つ)ため、ウクライナで撮影されたかに見えるように、ある光景を丸ごとでっち上げることができる」。
それに加え、TikTokでは、元の動画や音声ファイルの出所と日付を追跡するのが極めて難しい。さらに問題を悪化させているのが、TikTok上ではユーザーが事実上、匿名だということだ。「誰でも動画を投稿、再投稿することができ、かつ盗用されたり、再投稿されたりした動画がオリジナルコンテンツと並んで表示される」と報告書には書かれている。
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