米ファスト・カンパニー

過去の人気スタートアップ企業が続々と米国で大型IPO(新規株式公開)を果たしているが、業績を見るとまだ赤字を垂れ流しているところが多い。しかも、大半は黒字転換する日が来るのかどうかも分からない。このため、巨額の資金を投じてきたVC(ベンチャーキャピタル)のスタートアップを見る目が変わりつつある。

米国では、IPO(新規株式公開)を果たしたにもかかわらず、赤字を垂れ流し続けるスタートアップが後を絶たなくなってきた(写真はイメージ、出所/Shutterstock)
米国では、IPO(新規株式公開)を果たしたにもかかわらず、赤字を垂れ流し続けるスタートアップが後を絶たなくなってきた(写真はイメージ、出所/Shutterstock)

 ケールとロボットについてひとしきり議論した後、著名ジャーナリストのカラ・スウィッシャー氏が、米ロサンゼルスに本社を構えるサラダ専門ファストフードチェーンのスイートグリーン共同創業者兼CEO(最高経営責任者)であるジョナサン・ニーマン氏に投げかけた質問はシンプルだった。「利益は出ているんですか」。スウィッシャー氏は2018年、自身のポッドキャスト番組「Recode Decode」が終わりかけた頃、こう尋ねたのだ。そしてニーマン氏は当時、「出ています」と返答した。

 だが、スイートグリーンが21年10月、IPOを申請したとき、同社はスウィッシャー氏に対するニーマン氏の答えを正面から否定する財務内容を明らかにした。会社は18年に3100万ドル(約34億1000万円)の赤字を計上していた。実際、14年以来、毎年赤字だった(スイートグリーンは今回、コメントを控えた)。投資家は若い成長企業に黒字経営を期待しないものだが、スイートグリーンは既に創業から14年たっている。

 明るく、健康意識の高いブランディングと巧妙なデジタル注文システムのおかげで、スイートグリーンは創業間もない頃から有力なイノベーターと見なされ、15回の資金調達ラウンドでベンチャーキャピタル(VC)から合計4億7860万ドル(約526億4600万円)を調達し、大量の新規出店を続けてきた。そして、その間ずっと年間数百万ドルの赤字を出し、21年には赤字額が1億5300万ドル(約168億3000万円)に膨らんでいた。

 スイートグリーンは、莫大なVC資金に支えられているおかげで消費者が業績絶好調だと思い込んでいる多くの企業の1社にすぎない。顧客はVCからの“補助金”に支えられた配車サービスを利用し、VCの支援を受けたメリノウール製スニーカーでスタイルを決め、VCのお墨付きを得たシーツで眠り、VCに支えられたオーツミルク・ラテをすすってきた。

大幅赤字が目立つ21年組のIPO企業

 調査会社の米ディーロジックによると、米国では21年、1000社以上の企業がIPOを果たし、1996年に打ち立てられた最高記録件数を塗り替えた。だが、スイートグリーンのように、次第に多くの新規上場企業とIPO予備軍が、莫大な赤字に直面するようになっている。創業12年のメガネメーカー、米ワービー・パーカーは21年9月に直接上場によって公開市場にデビューを果たす前、2020年決算で5590万ドル(約61億4900万円)の赤字を計上していた。その1カ月後に当たる21年10月には、創業12年の衣料レンタル大手レント・ザ・ランウェイが、20年決算で1億7110万ドル(約188億2100万円)の赤字を計上した後に、IPOを果たしている。

 創業からこれだけ長い歳月がたち、膨大な量の資本によって売り上げ成長が支えられてきたにもかかわらず、21年組のIPO企業の大半はまだ利益を出していない。その多くについて、いつ黒字になるのか、あるいは黒字になる日が来るのかどうかも不透明だ。ここで、疑問が浮上する。こうした企業は実際、「バイブ(雰囲気やイメージの意)」以外に、ウォール街の投資家に一体何を売り込んでいるのか――。

 利益より成長を優先する企業に問題があるわけではない。例えば、ウォール街は長らく、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)企業を評価する際に「40の法則」を使ってきた。アナリストは伝統的に、その内訳に関係なく、成長率と利益率の合計が40%を上回る企業を好意的に見てきたのだ。言い換えると、成長率が50%のSaaS企業は、公開市場を満足させるために収益性を優先する必要がないということだ。

 だが、21年にIPOを果たした著名企業の多くは、伝統的なハイテク企業ではないうえに、絶対にSaaS企業ではないと言っていい。こうした企業は、経常収益を生み出す容易に拡張可能なソフトウエア商品を作っていない。それにもかかわらず、(投資する側は)セールスとマーケティングのダイヤルを調整することで、利益を簡単に出したり、切ったりすることができるという考え方を受け入れた。事がそんなに簡単であればいいのだが、そうはいかない。

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