米ファスト・カンパニー

米国政府と民間セキュリティー企業は米国企業に対し、ウクライナへの侵攻を契機にロシアが進めるであろうサイバー戦の作戦に対するデジタル防衛を、強化するよう迫っている。

ウクライナへの侵攻をきっかけにロシアがウクライナから西欧、場合によっては米国までも標的に入れて進める可能性のあるサイバー戦に、米国企業は備えるべきと欧米の専門家は主張している(写真はイメージ、出所/Shutterstock)
ウクライナへの侵攻をきっかけにロシアがウクライナから西欧、場合によっては米国までも標的に入れて進める可能性のあるサイバー戦に、米国企業は備えるべきだと欧米の専門家は主張している(写真はイメージ、出所/Shutterstock)

 ロシアによるウクライナ侵攻に伴って開始された“サイバー戦争”の側面は、まだ始まったばかりなのかもしれない。

 ロシアの軍事作戦は、多面戦争(米国防総省の言葉を借りれば「360度戦争」)が展開される今世紀初めての大きな事例かもしれない。この種の戦争では、銃や爆弾、戦闘機などの「キネティック(動的)」な兵器は戦略の一部にすぎず、偽情報や生物兵器、サイバー戦争のようなツールも重要な役割を担う。

 ウクライナでは、作戦の「ソフト」な部分が激化し続けている。ロシア軍は矢継ぎ早にサイバー攻撃を仕掛け、ウクライナのWebサイトが遮断され、何百台ものコンピューターが不正侵入された。専門家は、こうしたサイバー攻撃は恐らく、2022年2月下旬にロシア軍の最初の戦車が国境を越えてウクライナに侵攻するずっと前に、始まったと話している。

起動を待つ大量のマルウエア

 専門家によると、ロシア軍はウクライナとの国境沿いに部隊と装備を結集させている間に、ウクライナの数多くの組織のネットワーク内に、悪意のあるプログラムを埋め込んだ可能性が極めて高い。地上攻撃が始まった後、ただ「起動」させればいいマルウエアだ。世界的な調査・コンサルティング会社ISGの首席アナリスト、スタントン・ジョーンズ氏は、こうしたプログラムが今現在、眠った状態で起動を待っているかもしれないと話す。

 ジョーンズ氏は22年2月25日、ビデオ電話で「ウクライナのシステム、潜在的には西欧全体に、今後展開されるマルウエアが既にたくさん存在していると考えていいだろう。それこそが目下最大のリスクだ」と語った。さらに、そうした攻撃は、パイプラインや配電網などの重要インフラの遮断を狙うかもしれないと付け加えた。

 米政府関係者は、ロシアのサイバー攻撃は米国にも到達するかもしれないと警告している。ロシアのサイバー犯罪者は以前も米国の組織や企業を攻撃したが、ロシアによる侵略が進行し、北大西洋条約機構(NATO)が警戒態勢に入っている今、そうした攻撃は地政学的な影響を及ぼす可能性がある。

 サイバー攻撃の脅威から重要インフラを守るために18年に創設された米国土安全保障省傘下のサイバーセキュリティー専門機関(CISA)は、何カ月も前から、ロシアのデジタル攻撃の可能性について警鐘を鳴らしてきた。そしてロシアのサイバー攻撃の可能性に対する防衛を強化するために、米企業と緊密に協力してきた。

西側が攻撃に出るタイミング

 ジョー・バイデン米大統領は22年2月24日、「もしロシアが我々の企業や我々のインフラに対するサイバー攻撃を遂行するなら、対応する用意がある」と述べた。問題は、「釣り合い」である。米国は理論上、ロシアのサイバー攻撃に対して同じサイバー攻撃で応じることもできるし、伝統的な戦争行為で対応することもできる。後者はバイデン政権がぜひとも避けたい展開だ。

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