米ファスト・カンパニー

有名人(セレブ)が動画の個別メッセージを送ることでファンと直接結び付くことができるプラットフォームの運営会社Cameo──。2021年から、NFT事業やファンとの間のFace Timeコールの設定など、さまざまなサービスに一気に手を広げ、タレントにとってのワンストップショップになろうとしている。ファンを取り込む極意はどこにあるのか。

CameoのWebサイト。これまでは、規定の料金を支払い、登録されている有名人(セレブ)から自分宛のメッセージを得られるサービスで成長してきた
CameoのWebサイト。これまでは、規定の料金を支払い、登録されている有名人(セレブ)から自分宛てのメッセージを得られるサービスで成長してきた
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 セレブがファンに個別メッセージを送る動画プラットフォーム「Cameo(カメオ)」が2022年2月初め、NFT(非代替性トークン)事業に進出すると発表した。同社に登録している約5万人のアスリート、ミュージシャン、その他のインフルエンサーのファンは22年2月17日から、NFTプラットフォームOpenSea経由で「Cameo Pass」を発行できるようになる。現在の相場で550ドル程度(約6万円)のNFTを買うと、Cameoのさまざまなイベントに参加する独占的な権利を得られる。米ビバリーヒルズにある同社所有の豪邸で開かれるパーティーやセレブとの交流会、グッズ販売会、セレブとの質疑応答セッションといったイベントだ。

 「21年に大勢のタレントから問い合わせが殺到し、『CameoはNFTの分野で何をやっているの?』と聞かれた」。Cameo創業者のスティーブン・ガラニスCEO(最高経営責任者)はこう振り返る。「この問いに対する的確な答えがなかった。そこで他社が何をしているのか注目し始めたら、我々が気づいた一番大事なことは、ただ何かカッコいいことをするのではなく、Cameoならではの本物の利便性の体験を作らなければならないということだった」。

インフルエンサー経済とともに急成長

 デジタルプラットフォームが「クール」なNFTプロダクトを作って事業に参入することは、最近では必ずしも画期的なニュースではない。だが、今回のNFT事業への進出は、これまでに最もよく知られている事業の範囲を超えて、Cameoが成長するために現在進めている大きな取り組みの一環である。

 Cameoは現時点では、ファンがお金を払い、ショーン・アスティンや人気ドラマ「The Office」のメロラ・ハーディン、「Succession」のブライアン・コックスといったセレブに、自分宛てのパーソナライズされたメッセージ動画を作ってもらえるWebサイトとして知られている。タレント名簿は超一流のAリストからCリストまで網羅しており、数としては、いわゆる“駆け出し”のタレントに該当するCリスト掲載者がかなり多い。このランクに従って料金が大きく変わり、例えばコックスの場合、動画を1本頼む料金は689ドル(約7万5000円)だ。

 この巧妙でSNSフレンドリーな仕組みが、手間のかからない収入源を好むインフルエンサー経済と相まって、Cameoは創業以来5年間でビジネスの規模を見事に発展させた。Cameoに登録しているクリエーターは累計400万本の動画を制作し、21年だけで1万人の新たなスターがプラットフォームに加わった。今ではスペイン語、フランス語、ドイツ語、イタリア語バージョンも用意されており、Cameoが国際的な事業拡大を積極化するに伴い、21年には世界183カ国で動画が販売された。

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