
サステナビリティー(持続可能性)の追求は常に、米オールバーズにとって最も重要なことだった。その追求は、普通に考えれば収益確保への道のりを遅らせかねない。しかし、投資家は同社がいずれ黒字に至ることに懸けている。
エコフレンドリーな(環境に優しい)新興スニーカー企業オールバーズが、上場企業になった。
2021年11月3日朝、米サンフランシスコに本社を構えるオールバーズがIPO(新規株式公開)した。公開価格は1株12~14ドルの予想レンジを上回る15ドル(約1650円)で、初日の取引途中には株価がさらに高騰した。
3億300万ドル(約333億3000万円)近い資金を調達したオールバーズは今、21億6000万ドル(約2376億円)の株式時価総額を誇り、20年につけられた17億ドル(約1870億円)のバリュエーション(企業価値評価額)を大きく上回っている。これは、(従来は企業の高収益を妨げる要因とされてきた)サステナビリティー(持続可能性)の追求に大きな重点を置いても、大きな株主価値を生み出す収益性の高い企業になれると投資家が考えている兆候だ。
素材開発のR&Dエンジンがカギ
2016年、オールバーズは一風変わった商品で事業を立ち上げた。履き心地のいいウール製のスニーカーだ。ミニマルで、飾り気のないデザインのスニーカーは、米シリコンバレーの人々の間で人気を集め、やがて全米でファン層を築いた。同社は創業当初から素材のイノベーションに重点を置き、カニの殻やユーカリの繊維、サトウキビといった、これまで再生可能な素材と考えられていなかった物質を使って商品を開発してきた。これが競合他社と差異化を図るのに一役買った。
「プラスチックと合成繊維から天然素材、サステナブルな素材へとシフトする劇的な変化が業界で起きている」。オールバーズ共同創業者兼共同CEO(最高経営責任者)のティム・ブラウン氏はこう語る。「我々には、このR&D(研究開発)エンジンが最初からあった。これが極めて重要な差別化要因になっているため、今後もそこに投資し続けていく」。
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