
AR(拡張現実)とVR(仮想現実)業界は既に、期待先行とその後の失望のサイクルによって出来上がる被害に数回、遭ってきた。米フェイスブックはこうした被害を業界に再びもたらす新たなサイクルをつくっているのかもしれない。
米フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)は最近、自らの会社にメタバース企業になってもらいたいと語った。だが、それには問題がある。フェイスブックが定義するような「メタバース」はまだ実際に存在せず、恐らく今後何年も誕生しないことだ。過去のAR企業やVR企業の早計な話題づくりと同様、このような遠い未来の技術について語る時期尚早な宣伝は、メタバースを主流に持ち込もうとするフェイスブックの長期的な取り組みを妨げてしまうかもしれない。
いくつかの意味では、この進化は巨大SNSが乗り出す自然な挑戦のように思える。ユーザーがデジタル空間を体験できるメジャーなVRプロダクト(「オキュラス」)を所有する大手SNSであれば、特にそうだ。
フェイスブックは2018年5月に開催された年次開発者会議「F8」で、共通デジタル空間での出会いについて具体的に語り始めた。その後、デジタル空間への別のポータル(玄関)になる未来のARグラスを話題にし始めた。そして21年夏、ザッカーバーグ氏は「メタバース」に言及し始め、フェイスブックのビジョンを広げたように見えた。メタバースとは、さまざまな企業の独自デジタル空間をすべて結びつける、一種のオルタナティブ(代替)デジタルリアリティーのことだ。
大規模会議で幹部が宣伝
そして今、フェイスブックは事あるごとにメタバースを話題にする。21年9月下旬には、メタバースを形成する際に少数派のグループが大きな役割を果たすのを支援する新たな助成制度を発表した。
21年9月27日、技術、政治、ビジネス、芸術の世界の大物が集う「アトランティックフェスティバル」では、フェイスブック・リアリティー・ラボ担当副社長で次期CTO(最高技術責任者)への昇格が決まったアンドリュー・ボズワース氏とグローバル問題担当のニック・クレッグ副社長が、別々のインタビューでメタバースについて語った。インタビューを掲載した講演枠のスポンサーは、アトランティックフェスティバルの主要協賛企業の1つであるフェイスブックそのものだ。
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