
ファッション用品のオンラインショッピングの在り方は、この20年間、ほとんど変わっていない。だが、2011年創業の新興勢力である米スティッチ・フィックスは、百貨店の店員が顧客一人ひとりに合わせて商品を提案してきたやり方を手本に、「変わるべきだ」と考えている。
カトリーナ・レイク氏は2011年、データと人間のスタイリストの組み合わせを使い、「メイドウェル」「ケイト・スペード」「チャンピオン」「ザ・ノース・フェイス」といった数十のブランドから、一人ひとりに合わせて選んだ商品の箱詰めを顧客に送るスタイリングサービスを提供する、米スティッチ・フィックスを創業した。
そのスティッチ・フィックスはこの10年間で巨大ファッション企業に成長し、20年には410万人を数えるアクティブユーザーによって17億ドル(約1870億円)の売上高を生み出した。そして今、同社は新たに、大胆な野望を抱いている。会社が持つデータを駆使し、オンラインショッピングの体験を一変させようとしているのだ。
スティッチ・フィックスは21年9月下旬、すべての買い物客のためにカスタマイズされたショップを作る「フリースタイル」という名前のプラットフォームを立ち上げた。伝統的な百貨店に見られた「発見」のプロセスを模倣するよう設計されている。
自分が求めているものを具体的に検索しなければならない典型的なECサイトではなく、複数のブランドやスタイルが一緒に展示される仕組みだ。ショッピングに対するこの新しいアプローチは、従来のサブスクリプションモデルの域を超えてスティッチ・フィックスの事業を大きく拡大させる可能性を秘めている。さらには、人がオンラインで買い物をする方法をも塗り替えるかもしれない。
「発見」があるデジタル百貨店
自分が探しているものが何かはっきり分かっているときには、オンラインショッピングは素晴らしく便利だ。しかし、消費者が予想外のものを発見する手助けは、あまり得意ではなかった。「Eコマースはショッピングを民主化し、人々が自宅の快適な空間から買い物できるようになった」。創業者のレイク氏の後を継ぎ、21年8月にスティッチ・フィックスCEO(最高経営責任者)に就任したエリザベス・スポールディング氏はこう話す。「けれど、本当にいろいろな意味で不便だ。消費者は求めている商品を検索してスクロールすることを強いられ、目にする商品の大多数は自分に関係がないものだ。私たちは、発見に基づくショッピング体験を生み出したかった」。
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