
音声ファーストのSNSとして一世を風靡した米「クラブハウス」に触発され、SNSの現状に不満を抱く起業家たちが、オンライン上での絆を生むために人間の声に目を向けている。
音声のみのパネルディスカッションプラットフォーム「クラブハウス(Clubhouse)」は、2021年1月から2月にかけて、対応アプリのダウンロード数が200万件から1000万件に跳ね上がった。同年4月には、さらに600万件のダウンロードを上積みし、バリュエーション(企業価値)は40億ドル(約4400億円)に達した。
クラブハウスは新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)中に、自宅から出られず、ほかにやることがない米国人にとって一番人気のモバイルアプリになり、その人気は米ツイッターや米フェイスブックが独自の音声プラットフォームを立ち上げる火付け役になった。だが、比較的小さなソーシャルオーディオ企業の一群も、クラブハウス人気にあやかって脚光を浴び、「本物」であることを中核に据えた新たな形のSNSを売り込んでいる。
米国の調査会社CBインサイツは、「ソーシャルオーディオ」として知られるこの新カテゴリーを生み出した功績はクラブハウスにあると評価しているが、同社のアプリはこのジャンルの唯一の成功例ではなかった。パンデミックのせいで20年、多くの人が自宅から出られなくなると、音声と動画を中核に据えたプラットフォーム数社が躍進した。
16年に誕生したライブ音声プラットフォーム「スプーン(Spoon)」も、パンデミックの波に乗り、ダウンロード数を2600万件に伸ばした。ソーシャルオーディオがルネサンスを迎えたことを受け、ツイッター、米リンクトイン、米レディット、フェイスブック、スウェーデンのスポティファイが次々と、独自のライブ音声機能を立ち上げたり、今後推進することを約束したりした。
説教くさくなったクラブハウス
クラブハウスを試し、数あるディスカッションの1つに参加してみた経験がない人のために言えば、アプリのムードは世界的に有名な講演会「TEDトーク」と初期のオンラインチャットルームを足したような感じだ。クラブハウスは当初、内情に通じたベンチャーキャピタリストとハイテク起業家が参加するサロン風の対話で評判を築いたが、驚くまでもなく、たちまちのうちに、もう少し説教めいたものに変貌を遂げた。今では、専門家がステージに立ち、大衆に知恵を授ける場になっている。
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