米ファスト・カンパニー

AMCやゲームストップといった世間を騒がす人気銘柄を求める個人投資家は増えている。米国の新興企業パブリックは、自社アプリを利用する個人投資家に対して、長期的な投資ポートフォリオの重要性を示し、投機的な投資とのバランスを取れる投資家になってもらうことを目指す。

個人投資家に長期的投資を含むバランスの良い投資を促すフィンテック系スタートアップ企業パブリック(写真提供/Shutterstock)
個人投資家に長期的投資を含むバランスの良い投資を促すフィンテック系スタートアップ企業パブリック(写真提供/Shutterstock)

 投資の世界で使われる新しいアクロニム(アルファベットにおける略語の一種で、複数の単語から構成された合成語の頭文字をつなげて1つの単語として読むもの)がある。「BANG(バング)」がそれだ。カナダの携帯電話大手ブラックベリー、米映画館大手AMCエンターテインメント・ホールディングス、フィンランドの携帯電話大手ノキア、米ゲーム専門店ゲームストップの頭文字で、主にSNS上での話題による株価上昇の勢いを得て投資家を獲得する、いわゆる「ミーム株現象」を体現するようになった4社を指す。

勢い止まらぬミームストック現象

 SNSが持つ急速に流行が拡散するミーム文化と、プロ投資家ではないアマチュアによる個人投資(リテール投資)が交わった動きが、この1年で爆発的に拡大した。新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)を受け、個人で簡単に投資できるアプリの人気が一気に高まったおかげだ。アマチュアとみられる個人投資家は2020年に1000万件以上の投資口座を開設し、21年に入ってからも、その勢いは増すばかりだ。

 このボラティリティー(変動)の中で、米国のフィンテック系スタートアップ企業である「パブリック」が、同社初のブランドキャンペーンと新たなブランドアイデンティティーを打ち出した。現在のリテール投資ブームと、コミュニティーおよび長期的な安定性を両立させ、そのバランスを取る場所として、自社アプリを売り込む作戦だ。

 「人はゲームストップ株を買うために(アプリを使って)投資するかもしれないが、プロダクト(株式に投資できるアプリ)を使った後、きちんとしたポートフォリオを組んでいるか?」。パブリックのライフ・エイブラハム共同CEO(最高経営責任者)はこう問いかける。「それこそ我々がフォーカスしている点だ。肝心なのは、値動きの速い株に賭けたい人だけでなく、長期投資に興味を持つ投資家を増やすこと。そして株式市場を消費者向けプロダクトにすることだ。それも純粋に投機的なサイドからではなく、適切なポートフォリオ構築のサイドからもやる必要がある」。

 21年1月、オンライン掲示板レディットの「ウォールストリートベッツ」のようなフォーラムで大きな話題になったおかげで、ゲームストップ株は1600%急騰。AMC株は2400%も高騰した。AMCは先日、投資家に無料のポップコーンを提供することで、この騒ぎに便乗した。

 プロ以外の人が証券会社経由で証券を売買する個人のオンライン投資は、元祖ドットコムブームの頃から人気がある(EトレードのCMのサルを覚えておいでだろうか)。だが、今回のリテール投資の新たな波は、携帯アプリとSNSの拡散力とが収束する中で襲ってきた。

他社と一線を画す「ソーシャル投資アプリ」

 パブリックは自社を「ソーシャル投資アプリ」として位置付けた。ユーザーが他人のポートフォリオをフォローできるようにしながら、企業と業界のアナリスト情報も得られるようにしている。エイブラハム氏はこれを描写するためにスポーツジムの比喩を使い、やる気を出すためにパーソナルトレーナーとジム仲間を持つようなものだと言う。パブリックは19年9月に事業を立ち上げ、21年2月には新たに2億2000万ドル(約240億8000万円)を調達。これでバリュエーション(企業価値)が12億ドル(約1300億円)に達した。

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