
「App Store(アップストア)」を巡る、米アップルとゲーム「フォートナイト」の開発元である米エピックゲームズとの法廷闘争。これにアップルが勝訴したとしても、米議会がアプリ配信に関する新たな規則を制定すれば、多くのものを失う可能性が高い。
米アップルのアプリストアが反トラスト法(独占禁止法)に違反しているとして米エピックゲームズが訴訟を起こした。この訴訟で誰が勝つにせよ、歴史はこの裁判を、より大きな戦争におけるただの小競り合いと見なすかもしれない。
アップルが勝訴する公算は大きい。古色蒼然(そうぜん)とした現行の反トラスト法と、米国の裁判所における過去数十年間の法学から言って、原告が反トラスト法訴訟に勝つのは極めて困難だ。だが、連邦議会は今、反トラスト法の改正、あるいはアプリ市場に対する直接的な規制によって、アップルのような企業の独占力を抑制することを検討している。
アップストアを巡る注目の裁判
実際、連邦議会内の取材先によれば、議員たちは、カリフォルニア州オークランドの連邦地裁で2021年5月末に結審したエピック対アップルの訴訟を熱心に注視してきた。下院の反トラスト小委員会(委員長はロードアイランド州選出の民主党下院議員、デービッド・シシリーニ氏)と上院の反トラスト小委員会(委員長はミネソタ州選出の民主党上院議員、エイミー・クロブシャー氏)はともに、アップルの「アップストア」と「グーグルプレイ」経由のアプリ配信について公聴会を開いた。
これらの公聴会では、アップストアに掲載してもらうために従わなければならない厳格な規則について、アプリ開発者が苦情を訴えた。アップストアは開発者にとって、「iOS」端末ユーザーの巨大な世界市場にアクセスする事実上唯一のルートだ。米国では、すべてのモバイル端末の過半がiOSを搭載しており、各種調査によれば、iOSユーザーは他のモバイルユーザーよりもアプリとアプリ内課金にはるかに多くのお金を費やす。
アップルは、サードパーティー(第三者)のアプリがアプリ内でモノやサービスを販売する際にアップストア専用の決済システムを使うことを義務付けており、売買代金に対して最大30%の手数料を徴収する。アプリ開発者は、それ以外の方法でiOSユーザーにアプリや各種デジタルサービスを販売することを禁じられている。アップルの開発者向けガイドラインの文書には、以下のように書かれている。
「アプリは、ライセンスキーやAR(拡張現実)マーカー、QRコードなど、コンテンツや機能のロックを解除するために独自のメカニズムを使ってはならない。アプリとそのメタデータには、アプリ内課金以外の購入メカニズムへと顧客を誘導するボタンや外部リンク、行動喚起を設けてはならない」
最大の争点はアプリ市場の定義か
アップルは、もちろん、「アップルミュージック」のような独自アプリを作っており、アップストア内で競合アプリよりも目立つ場所に掲載できる(アップストアで「Music」を検索すると、検索結果のトップは音楽配信最大手のスポティファイではなく、アップルミュージックだ)。
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