
デニムの巨人リーバイスの新しいCMは、ファッション業界の過剰消費に狙いを定め、利用者にサステナブル(持続可能な)社会を訴えるつくりになっている。だが、メーカーとして考えたとき、販売数量を減らして、なお収益を上げられるのかが課題となる。
ファッションブランドは毎年、何百万ガロンもの水を使い、化学物質と温暖化ガスを自然環境に吐き出すことで地球に莫大な犠牲を強いながら、60億本ものジーンズを生産している。年間45億ドル(約4950億円)の純収入を誇るデニムの巨大企業、米リーバイ・ストラウスは、そんなに多くのジーンズを買うのをやめてほしいと考えている。
2021年4月下旬に放送が始まったリーバイスの最新CMは消費者に、「Buy Better, Wear Longer(良いものを、長く着よう)」と呼びかけている。この宣伝キャンペーンは、地球上に約80億人しかいない人口のために毎年1000億点以上の衣類を生産しているファッション業界の過剰消費にスポットライトを当てることを狙ったものだ。
環境保護主義者はよく、人がいかに買う洋服を減らさなければならないかについて語るが、世界のデニム産業を席巻するリーバイスから発信されるメッセージとしては、直観に反する。同社はよりサステナブル(持続可能)な形でジーンズを生産するよう対策を講じてきたものの、そうした漸進的な改善だけでは地球を救えないことを明らかに認めたのは、今回が初めてだ。
だが、リーバイスは本当に販売数量を減らせるのか。また、株主からの圧力がかかる上場企業として、販売数量を減らしつつ、売り上げを伸ばし続けることができるのか。これらは、リーバイスのみならず、最新のトレンドを世に打ち出し、消費者にどんどん買う気にさせることをビジネスモデルの中核に据えている2.5兆ドル(約275兆円)規模のファッション産業全体にとって重要な問題だ。
循環型のシステムに向けてかじを切る
過剰消費と戦うこの取り組みは、ただの広告キャンペーンではない、とリーバイスのジェフリー・ホーグCSO(最高サステナビリティー責任者)は主張する。会社の各部署が「過剰消費を組織的に進めてしまうレバー(仕組み)に対処する」戦略を立てていると言う。
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