H&Mが中国で陥った危機 ナイキやVisaも対岸の火事ではない(画像)

中国の新疆ウイグル自治区での人権侵害を巡り、世界中の企業が難しい対応を迫られている。中国研究の専門家の1人は既にこう語り始めた。「ブランドはもはや、中国と西側の両方を喜ばせることはできない。どちらかを支持しなければならず、どちらを選んだとしても悪影響が出る」──。

世界中の多くの収容所に併設されてきた「監視塔」のイメージ(写真/Shutterstock)
世界中の多くの収容所に併設されてきた「監視塔」のイメージ(写真/Shutterstock)

 スウェーデンの衣料品大手ヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)は15年の歳月をかけて中国で事業を拡大し、かの地で急増する中産階級を取り込もうとしてきた。だが2021年、中国の消費者からお金を稼ぎながら、中国のサプライチェーン(供給網)に潜む人権問題を避けて通るのがいかに難しいかを思い知らされた。

 中国が何十万人もの少数民族に綿花畑での肉体労働を強いているという報道を理由に、H&M、米ナイキ、英バーバリーをはじめとした多くの欧米企業が、世界の綿花の2割を生産している中国北西部の新疆ウイグル自治区から、素材や製造資源を調達するのをやめると発表した。

 中国側は怒りをもって反応した。政府の報道官はこうした強制労働疑惑を「悪質な嘘」と呼び、中国人のブランド大使はこうした企業との関係を断ち、中国の一部消費者はこうしたブランドの不買運動を誓ったと報じられている。

 H&Mは特に大きな打撃を受けた。21年3月下旬、同社が展開する400店舗が中国の地図と配車アプリから消去され、インターネット検索でH&Mのオンラインショップが表示されなくなった。H&Mにとって中国は売り上げベースで世界で3番目に大きな市場で、収益全体の6%を占めているため、同市場からの排除は大幅な損失につながる可能性がある。

ブランドの打ち出す価値観を貫徹できるか

 H&Mを含むファッションブランドはこの10年、サステナビリティー(持続可能性)や労働者の倫理的な処遇に関心を持つミレニアル世代の消費者の要望に応え、ブランドが示す価値観を重んじるようになった。問題は、世界屈指の規模を誇る消費市場を持ち、かつファッション業界に必須の繊維を大量に生産・供給する国によって、このバラ色のイメージに疑いが投げかけられたときに何が起きるか、だ。

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