
リセール産業が大ブームに沸いている。米スレッドアップの新規株式公開と高株価は、その活況を示す最新の兆候だ。新たな技術を使って薄利多売を可能にする仕組みを考えだすことで、環境保全への貢献も実現する。
リサイクルショップがこれほどもうかるとは、一体誰が思っただろうか。「世界最大のコンサインメントストア(委託販売店)」を名乗る米スレッドアップ(ThredUp)がこのほど新規株式公開(IPO)を果たし、1億6800万ドル(約184億8000万円)の資金を調達し、取引初日に株価が43%跳ね上がった。
同社のビジネスモデルは、多くの売り手から集めた安価な古着を大量に販売することで成り立っている。一つひとつのアイテムの販売で数ペニーずつ稼ぐことで、2020年には400万点近い衣類を売り、1億2800万ドル(約140億8000万円)の利益を稼ぎ出した。それもファッション業界の大半が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)で打ちのめされている間に、これだけのことをやってのけた。
スレッドアップのIPO申請の登録書類は、一体何が委託販売業を9ケタの巨大ビジネスにしたのかについて新たな洞察を与えてくれる。突き詰めると、ロジスティクスのほぼすべての業務を自動化するために機械とアルゴリズムを使う、注文設計された複雑な倉庫にその秘訣(ひけつ)があった。
21年はリセール(再販)ビジネスにとって実り多き1年になろうとしている。同年1月には、売り手と買い手を結びつけるフリマアプリを手がける米ポッシュマークもIPOに成功した。ウォール街は、こうした薄利ビジネスでも収益を上げられることを認識したようだ。だが、長期的には、スレッドアップは課題に直面する。市場に次々登場する多くのプレーヤーから厳しい競争を迫られるほか、米パタゴニアなどの大手ブランドが自社商品のリセール市場を立ち上げているからだ。
ハンガーラックから未来的な倉庫へ
ジェームズ・ラインハートCEO(最高経営責任者)がスレッドアップを創業したのは09年、米ハーバード大学で経営学と公共政策のダブル学位を取得して卒業した直後のことだ。以前はNPO(非営利団体)や教育分野で働いていた。スレッドアップを立ち上げたのは、人々が古着を売り買いするのを容易にするためだ。そうすればファッション業界の莫大(ばくだい)なごみ問題を軽減できると考えた。
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