
プライバシー上の懸念をめぐり、何百万人もの人が米フェイスブック傘下のワッツアップ(WhatsApp)から逃げ出す中、爆発的な成長を遂げるメッセージングアプリの米シグナルが、新しいマーケティングキャンペーンに乗り出した。
女優のタラジ・P・ヘンソンが地下駐車場で車から降りると、何台ものカメラがその一挙手一投足を監視している。エレベーターに乗ったと思いきや、やめて裏階段に向かう。階段の途中で監視カメラを見つけると、レンズにスプレーをかける。「みんな、私たちは監視されているのよ」。ヘンソンが言う。「プライバシーはビッグテックのビジネスモデルじゃない。何かについて話していたら、自分のソーシャルでそれについての広告が出てくるアレを知っているでしょ? これは便利なんかじゃない、不気味よ」──。
ワッツアップから大量流入、米議会襲撃事件も後押し
これが数々の受賞歴を誇る女優が出演する米シグナルメッセンジャーの初の広告キャンペーンだ。シグナルは、ユーザーのデータを記録・監視せず、他社に販売もしない暗号化メッセージングサービス。2014年のサービス開始以来、シグナルは長らく、記者と活動家のお気に入りのメッセージングサービスだった。だが、ワッツアップがプライバシーポリシーの変更を発表した21年1月5日からダウンロード数が爆発的に増加し、世界70カ国・地域以上で最もダウンロードされたアプリになった。
ポリシーの変更によって、ワッツアップがユーザーのメッセージを読み、情報を親会社のフェイスブックに提供できるようになるという噂が飛び交った。会社側は否定したものの、ポリシー変更の期限を2月8日に控え、ワッツアップはすぐにユーザーを失い始めた(減り方があまりに激しかったため、ワッツアップが後に期限を3月15日に延期したほどだ)。そして1月7日、著名ハイテク起業家のイーロン・マスク氏がシグナルの利用にお墨付きを与えるツイートを書くと、ユーザー流出が一気に加速した。
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