
コロナ禍を追い風に急成長を遂げているテレヘルス(遠隔医療)。オンライン薬局の米ヒムズは、かかりつけ医がいない忙しい人たちにサービスを提供している。だが、我々は伝統的な形のヘルスケアを急いで捨てるべきではないかもしれない。
限られた商品ラインアップを扱う、ブランド色の強いオンライン薬局、米ヒムズが2021年1月21日、1株17.08ドル(約1780円)で株式上場企業としての売買を開始した。特別買収目的会社(SPAC)のオークツリー・アクイジションとの合併を通じて上場を果たした格好だ。上場初日に株価は7%下落。1月20日に手続きが完了した買収では、ヒムズの企業価値は16億ドル(約1664億円)と評価されていた。
今回の上場が注目に値するのは、ヒムズとそのヘルスケアモデルが今後、世の中に定着することを示唆しているからだ。同社は17年の創業以来、着実な進歩を遂げてきた。今では、男性向け「Hims(ヒムズ)」と女性向け「Hers(ハーズ)」の2ブランドで計30万人近い購買顧客を誇っている。2020年通年で、1億3800万ドル(約143億5000万円)の売り上げに対し、2000万ドル(約20億8000万円)の赤字を計上した模様だ。21年には売り上げを30%伸ばす計画だ。
ヒムズはウエルネスブランドとして発足したが、その枠を超えて成長し、純粋なプライマリーケア(初期医療)の担い手に発展した。今では、かかりつけ医がいない驚くほど大勢の人に対して、サービスを提供する絶大な可能性を秘めている。しかし、同社のビジネスモデルが、昔からの長期的プライマリーケアが提供してきたような健康上の結果を利用者にもたらせるかどうかは、不透明だ。ローテーション制の医師とブランド商品に重点を置いた同社のビジネスモデルは、優れたケアを提供しようとする医師の仕事を妨げることが多い個別報酬制医療の問題を、悪化させる結果になりかねない(編集部注:米国では患者が病院で処置を受けると、病院に対しての報酬以外に、医師の治療技術への報酬も支払う。医師が自分のスキルに見合った報酬を得られるというメリットはあるものの、長期的なケアを提供する医師より、単純な症例の患者ばかりを効率的に治療したがる医師が増えるという問題が指摘されている)。
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