
デジタル広告に対する統制が著しく不足しているせいで、ブランド企業は図らずもネット上でデマを拡散させる“資金源”となり、正当なニュースからは必要な資金を奪ってしまう恐れがある。
2021年1月6日、米ワシントンの連邦議会議事堂でカオスが勃発すると、ブランド企業は即座に進行中の広告・マーケティングキャンペーンを中断し、ソーシャルメディア上での活動を控えた。大ニュースになるどんな出来事でもそうだが、マーケターはその場の空気を読み、例えば「Dilly Dilly」(編集部注:北米でヒットしたアンハイザー・ブッシュ・インベブのテレビCMのフレーズ、「おいしい、うれしい」といった意)が世間の雰囲気にふさわしくないときを知る必要がある。
事件直後、米ノースウエスタン大学のティム・カルキンス教授(マーケティング専門)は広告専門誌「アドエイジ」に対し、「もし自分がブランド企業で、向こう数日間に何かとても陽気な広告宣伝を計画していたとしたら、見直した方がいい。なぜなら、国が今置かれているトーンと合わないからだ」と語った。
1日だけ広告をやめても無意味
だが、6日の出来事にどう対応すればいいのかヤキモキするのは仕方なかったとしても、本来、多くのマーケターがこの時間を使って本当にやるべきだったことは、会社のブランドがネット上のどこに、どう表示されているか、そしてもっと重要なことは、1年の残り364日間に自社が支払った広告費がどこに使われているのかを、再検証することだった。
YouTubeやFacebook上にある多くのチャンネルやグループは言うまでもなく、ワン・アメリカ・ニュース(OAN)やニュースマックス、FOXニュースといったメディアも、この2カ月間ずっと、米大統領選挙に不正があったという陰謀論を広めており、これが1月6日の「議会乱入事件」をあおる“燃料”になった。
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