
米国のテレビ報道の勢力図が大きく変わりつつある。新興メディアの米ニュースマックスが“保守派の憤慨”を無料で配信している今、なぜこれまで通りにケーブルテレビと米FOXニュースにしがみつく必要があるのか?
米国のケーブルテレビ視聴率を見ても分からないが、米FOXニュースが問題を抱えている。
保守系報道チャンネルの巨人であるFOXニュースは2020年11月、米国の大統領選挙のおかげで、調査会社ニールセンによる視聴率で過去最高記録をたたき出した。しかし、その支配的な地位が今、より好戦的なライバル局で、ジョー・バイデン前副大統領の勝利を疑うことをFOXニュース以上にためらわなかった米Newsmax(ニュースマックス)によって脅かされている。この報道スタンスのために、ニュースマックスはドナルド・トランプ大統領から称賛され、トランプ氏の支持者による買収や投資の噂が飛び交うようになり、テレビ報道の序列におけるニュースマックスの台頭を検証する記事が次々と書かれた。
こうした記事の大半は、ニュースマックスがFOXニュースのように利益を稼いでいないこと、そしてニールセンの視聴率調査でまだFOXニュースに大きく水をあけられていることを指摘している。ニールセンの調査では、FOXニュースは19年連続で、テレビ業界で最も人気の高いケーブルニュースチャンネルの座を維持するとみられている。
だが、こうした記事が見落としているのは、ニュースマックスは本格的なライバルになるためにケーブルテレビ経由の視聴者を増やす必要がない、ということだ。FOXニュースの視聴率急上昇が完全に有料テレビ放送の「バンドル(複数のチャンネルを束ねたパッケージ)」の範囲内で起きたのに対し、ニュースマックスは、ケーブル契約が必要ないオンラインの無料ライブ配信にチャンネルを合わせる視聴者を何百万人も抱えているからだ。
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