
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)でファッションビジネスが壊滅的な打撃を受けている。ではなぜ、もっと多くのブランドが、この窮地を救えると思われている受注生産モデルを取り入れないのか?
売れ残った洋服の膨大な山が米国各地の倉庫に眠っている。新型コロナウイルス対策のロックダウン(都市封鎖)が2020年3月に始まったとき、多くの人が流行の洋服を買うことに興味を失い、ブランド各社が数百万ドル(数億円)もの在庫を抱え込むことになった。
ファッションデザイナーのミーシャ・ノヌーには、そんな問題はなかった。17年に自身の名前を冠したブランドを受注生産に切り替え、顧客から注文が入った後になって初めて、ペルーと中国の工場で衣類を縫い始める体制にしたからだ。このため、コロナ禍を受けて多くの女性がドレスを買うのをやめ、自宅でスエットパンツを着るようになったときも、ノヌーは商品を無駄にすることなく適応することができた。
コロナ禍で露呈した業界のもろさ
「このビジネスモデルのおかげで、毎日、自分たちの業務を見直せる。売れ残った商品をセールにかけたり、処分する方法を考えたり、そうした心配をする必要がなかった」とノヌーは言う。
コロナ禍は、ファッションビジネスがいかに軽薄で脆弱になったかを浮き彫りにした。ニーマン・マーカスやロード・アンド・テイラーといった象徴的な米高級百貨店は、既に破産申請した。ブルックス・ブラザーズやJクルーをはじめとしたショッピングモールの定番ブランドは死にかけている。
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