米ファスト・カンパニー

米フェイスブックのAI(人工知能)研究所は、特に要求の厳しい課題を自らに与えた。アルゴリズムを駆使してMRI(磁気共鳴画像)スキャンの細部を埋め、撮影速度を引き上げることだ。最初の研究からは期待できる結果が出てきている。

MRI画像を撮影する患者と表示される画像のイメージ(写真提供/Shutterstock)
MRI画像を撮影する患者と表示される画像のイメージ(写真提供/Shutterstock)

 研究者は長年、MRIの撮影スピードをアップする方法を模索してきた。2年前の2018年、米フェイスブックのAI研究所(FAIR)はMRIの撮影にかかる時間を1時間から15分程度まで短縮することが期待できるAIのアルゴリズムの開発について、米ニューヨーク大学医学部の研究者らとのコラボレーションに乗り出した。

 フェイスブックは20年になって最初の研究の結果を「ファストMRI」として公表し始めた。その内容は、AIを駆使したMRIスキャンの質と有用性が、旧来のMRIスキャンと変わらないことを示している。このファストMRIと呼ばれる技術が幅広く採用されれば、MRIが利用しやすくなり、コストも安くなる可能性がある。

質は旧来のMRIより上

 ニューヨーク大学の研究者らによって実施された実験では、108人の患者の膝を撮影した普通のMRIスキャンを使い、画像から生データの一部を取り除いたうえで、この新しい限定的な情報に基づいて画像を生成するためにAIを駆使し、新たなMRIスキャンを作成した。6人の放射線科医がすべてのスキャンを検討し、個々のスキャンについて臨床的な診断を下した。

 実験では、全体的に見て、放射線科医は元のMRIスキャンとファストMRIのスキャンについて同じ診断を下すことが分かった。研究者らは、放射線科医の多くが伝統的なMRIよりもファストMRIの質の方を好み、双方をかなり確実に区別できた医師が1人しかいなかったと話している。この結果は、実際にファストMRI技術が利用できるようになったときには、医学界が積極的にこの技術を取り入れるかもしれないことを示唆している。

 人間の体内の主に軟組織の画像を撮影するために使われるMRI装置は、多くの場合、中心に開いている穴の中で磁場と高周波パルスを生み出す「ドーナツ」のような形をしている。ドーナツの中に入った人体を動かすことでさまざまな角度から電磁波を放射し、体内の画像が生成される仕組みだ。スキャンの複雑さによっては、必要な画像を撮影するのに1時間以上かかることがある。このため1日に撮影できる人の数が制限され、スキャンの費用も高くなるわけだ。

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