
米スターバックスは2025年に向けて、これまで目指してきた「サードプレイス(第3の居場所)」にとどまらず、モバイル注文と便利なピックアップをも可能にした新しい店舗に刷新する計画を立てていた。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、スターバックスは今、一気に前倒ししてこの計画の実現に取り組み始めている。
新型コロナウイルス感染症が2020年3月半ばに猛威を振るい始めたとき、米スターバックスの株価は市場全体とともに急落した。何しろ同社は米国内に約1万5000店、中国に約4000店の店舗を構えており、両国で全土のカフェを閉鎖していた。世界が隔離下に置かれた状態で一体どうやって生き残れるのか。
だが、アプリでの注文やドライブスルー、宅配サービスの他、第1四半期(1~3月)の初めの業績が好調だったおかげで、スタバの売上高は同四半期に5%しか減少しなかった。スタバは生き延び、株価はおおむね元に戻り、市場の一部からは今投資するには最も安全な投資先の1社と見なされている(ただし足元の4~6月期決算は大幅に悪化すると会社側は予想している)。
スタバを破綻から守ったのは、カフェイン摂取に対する世界的なニーズだけではない。もっとも、間違いなく助けにはなった。同社は何年も前から、職場や自宅から離れ、心地よく過ごす「サードプレイス(第3の居場所)」であることの戦略的な対極として、モバイル注文と便利なピックアップに投資してきた。そして今、新型コロナウイルスが近く消えることはないと想定し、便利なコーヒー購入に注力することを決め、2023年から25年にかけての導入を予定していた全面デジタル注文・ピックアップ戦略を前倒しした。その結果、スタバは向こう1年半で、これまでと大きく姿を変えることになる。
「1つ知っておくべきことは、新型コロナウイルス感染症が世の中に広がる前でさえ、我々の事業はざっと8割以上が持ち帰りだったことだ」。スターバックスのロズ・ブルーワーCOO(最高執行責任者)はこう説明する。「だが、我々は(既に)他の仕事もやっていた。小売りと仕事の未来を見据え、店舗を置く最適な場所がどこかを決めようとしていた」。
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