ファッション業界では今、そのカーボンフットプリント(商品のライフスタイル全体を通した温暖化ガス排出量)から商品の値段まで、すべてのものに影響を与えるかもしれない大変革を実行するかが、検討されている。

公開書簡へ署名した人物が在籍する日本ブランドの1つ、ユナイテッドアローズの公式Webサイト
公開書簡へ署名した人物が在籍する日本ブランドの1つ、ユナイテッドアローズの公式Webサイト

 読者の皆さんは今までに、百貨店が毎年3月に水着を陳列し始めたり、8月に冬物のコートを並べたりするのが、いかに奇妙か考えたことがあるだろうか。このようにファッションブランドは、何十年も前から、実際に着る季節になる数カ月前に新作の洋服を売ってきた。これは消費者の実際のニーズにそぐわず、業界が生む膨大な無駄の一因となっている。

数百のステークホルダーが公開書簡に署名

 だが、このシステムは今、変化の瀬戸際にあるのかもしれない。2020年5月半ばの1週間で、著名ブランドのトリー・バーチ、ロダルテ、クロエ、トム・ブラウンや百貨店のノードストローム、専門大学のロンドン・カレッジ・オブ・ファッションなど、数百を数えるファッション業界のステークホルダー(利害関係者)が、人々が実際に着る季節にそのシーズンの洋服を売ることを提唱する「ファッション業界への公開書簡」に署名したのだ。

 平均的な消費者にとっては取るに足りない変化に思えるかもしれないが、この書簡は、商品の値段から地球に与えるインパクトまで、多大な影響をもたらす可能性がある。

 多くの高級品デザイナーは何年も前から、ファッション業界のカレンダーを調整しようとしてきた。新型コロナウイルス感染症の流行が、こうした予定をリセットする機会を与えてくれた。中国とイタリアの衣料品工場が20年2月、3月に閉鎖を余儀なくされたため、今回の新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)は、サプライチェーンの遅延をもたらした。その結果、20年は秋物コレクションが例年のように夏ではなく、秋に納入されると見られている。

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