
新型コロナウイルスの感染拡大という危機で米国に人員解雇の嵐が吹き荒れる中、決済処理サービスを提供するハイテク系企業のグラビティ・ペイメンツは、従業員全員に自主的な給与カットを求めることで、40人のレイオフを避けた。
新型コロナウイルスの感染拡大は既に経済に甚大な被害をもたらしている。外出禁止令が続き、経済が停滞するため、あらゆる規模の企業が従業員のレイオフ(一時解雇)を余儀なくされているからだ。だが、従業員の雇用を守るために、米シアトルに本社を構えるグラビティ・ペイメンツのような企業は創造力を発揮している。
グラビティ・ペイメンツでは、売り上げが半減したにもかかわらず、ダン・プライスCEO(最高経営責任者)が210人の従業員全員に給与を払い続ける方法を見つけた。まず従業員一人ひとりに、今後数カ月、どれくらいの給与カットに耐えられるか聞いた。その回答に従って給与を削減することで、現在の状況が続いても最大で1年間、全員を雇い続けるだけの資金を確保したのだ。
取引先は小さな商店、米同時テロや金融危機より大きな打撃
2004年に創業されたグラビティ・ペイメンツは、米国各地の小企業約1万3000社に決済処理サービスを提供している。このためプライス氏は、家族経営の小さな小企業の経営状態について独特な知識を得られる。「取引先の商店全体で見ると、過去1カ月間で売り上げが55%減った」。プライス氏は筆者にこう話してくれた。「『9.11(01年に発生した米同時多発テロ)』や『グレート・リセッション(08年に起きた金融危機後の大不況)』より大きな落ち込みだ」。
グラビティ・ペイメンツは小企業の売り上げの約0.3%を手数料として受け取る。つまり、これは同社も似たような売り上げ減少に見舞われたことを意味する。プライス氏いわく、現在の大幅減の売り上げが今後も続けば、会社は4~6カ月以内に廃業に追い込まれる。
同氏は15年に全国的に知名度を上げた。所得と幸福に関する研究論文を読んだ後、グラビティ・ペイメンツの最低給与水準を年間7万ドル(約735万円)に設定したときのことだ。現在の危機に際しては再度、独創的なアプローチが求められた。エコノミストらは今、新型コロナウイルスの影響がとてつもなく大きくなると考えているからだ。実際、米国では失業保険の申請件数が既に過去最多を記録している。
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