
健康意識や環境意識の高まりから、植物性のミルク製品を好む人が増えている。発酵を利用して牛乳と栄養素が全く同じたんぱく質を作るスタートアップ企業が、世界中のサプライチェーンに商品を供給するために1億4000万ドルもの資金を調達。乳業界の風雲児として注目を集めている。
ピーミルク(エンドウ豆乳)、アーモンドミルク、豆乳、ココナツミルク、オートミルク、おびただしい数のチーズ代替品、ヨーグルト、牛を一切使わずに作られたその他商品──。乳製品の代替品は今や、どこでも見かけるようになった。だが、本物と間違われる商品はほとんどない。
発酵を利用して牛乳と栄養素が全く同じたんぱく質を作るスタートアップ企業、米パーフェクトデイは違う。例えば同社の乳たんぱく質を使って作られた「アイスクリーム」のサンプルを食べてみたところ、筆者には普通のアイスクリームと全く同じ味に思えた。これは業界にとって根本的な変化を表している。
そのパーフェクトデイが2019年12月11日、同社の材料の市場投入を後押しする1億4000万ドルのシリーズCの資金調達ラウンド完了を発表した(編集部注:シリーズCは本格的な事業拡大に入るための後期の資金調達で、株式上場なども視野に入ってくる段階)。
本物と区別がつかない味の秘訣
創業者らによれば、本当に乳製品のような味がする商品を作るカギは、乳たんぱく質だという。「ココナツオイルとラクトース(乳糖)以外の砂糖を使ってフローズンデザートを作ることはできる」。共同創業者でCEO(最高経営責任者)を務めるライアン・パンディヤ氏はこう説明する。「だが、乳たんぱく質がないと、こうした材料をしっかりつなぎ合わせて、クリーミーなミルクの質感と乳製品特有の味や香りを得ることができない」。
乳たんぱく質は水分、脂肪、その他すべての成分を結合させる役割を果たしている。パンディヤ氏によると、既存の植物由来のミルク製品の多くはほとんどたんぱく質を含まない。また、たんぱく質を含んでいる商品でさえ、材料が分離してしまわないよう安定剤や増粘剤、乳化剤に頼っており、あまりうまくいかないという。
牛なしで乳たんぱく質を作るために、パーフェクトデイはたんぱく質を生産するようプログラムされた微生物を利用している。これは、ビタミンやプロバイオティクス(体に良い細菌)、米インポッシブル・フーズが植物由来ハンバーガーに肉の味わいを加えるために使っている「ヘム」のような材料を生産するために、すでに他社によって使われているのと同じ加工法の一種だ。
パーフェクトデイは自社製品を「フローラ由来乳たんぱく質」と呼んでいる。フローラというのが、このたんぱく質を生産するために使われている微生物の名前だ。
あえて自社生産をせず、世界に普及へ
同社は今夏、この乳たんぱく質を使ってアイスクリームの試作品を作り、1日で完売したものの、商品を自社生産するつもりはない。「毎日、すべての決断について、思考プロセスは『世界のすべての人が手に入れられるようにするには、どうすればこの規模を拡大できるか』というものだ」とパンディヤ氏は言う。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー