米ファスト・カンパニー

様々なサービスや業界地図を塗り替える技術として注目を浴びる次世代通信5G。米クアルコムのクリスティアーノ・アモン社長は高速大容量の夢を売り込もうとしている。ただその夢も、現実には通信速度などの面でかなりムラがある。

5Gで実現できることには限界がある(写真はイメージ、写真/Shutterstock)
5Gで実現できることには限界がある(写真はイメージ、写真/Shutterstock)

 米通信機器大手クアルコムが描く次世代通信5Gのビジョンには、数多くの要素が含まれている。端末の数だけでなく、使用する周波数帯やエリア展開のスケジュールなど様々だ。

 クアルコムのクリスティアーノ・アモン社長は11月19日のアナリスト説明会の基調講演で、スマートフォンだけでなく自動車、ノートパソコンまで広がる野心的な5G活用のビジョンを示した。

来年の今ごろまで5Gスマホは買わないほうが賢明

 アモン氏のビジョンは、思慮深く解釈すると、恐らく来年の今ごろまでは5Gのスマホ端末を買うのを避けたほうがいいということになりそうだ。来年の今頃という時期さえ、次世代無線ブロードバンド環境をいかに体験できるのか、自分の居場所によって大きく異なることを覚悟しておいたほうがいい。

 世間では盛んに、5Gという画期的な技術による展開が未来を塗り替えると言われている。が、アモン氏が時間をかけて強調したように現実はもっと複雑だ。

 まず、5Gが使う周波数から見ていこう。これはミリ波の周波数帯を上に塗ったスポンジケーキだと思えばいい。こうしたミリ波帯が、これまでで最も速く、最も反応が良いコネクティビティー(接続性)を提供する。ダウンロードは1秒当たり1ギガビットを超え、レイテンシー(遅延)は10ミリ秒未満と、従来は有線ブロードバンドに限られていたパフォーマンスが実現される。

 「こうしたパフォーマンスは、ミリ波なしでは不可能だ」とアモン氏は語る。活用事例としてゲーム機の高精細グラフィックスを実現するクラウドホスティング型ゲームや、スマホ上のフラッシュストレージと機能的に見分けがつかないクラウドストレージなどを挙げ、「ミリ波の帯域とレイテンシーのおかげで、ストレージを実際にクラウドへ移すことができる」と言い切った。

通信距離の短さが難点

 だが、ミリ波を使う5Gには、通信できる距離が極端に短いという問題がある。屋外でも基地局からスマホまで1000フィート(約304メートル)足らずしか電波が届かない。屋内での受信状態はそれよりはるかに悪くなる。全国レベルや世界レベルで言えば、ミリ波5Gが主流になるのは何年も先だ。今のところミリ波5Gを導入したのは米国の通信会社だけで、これらの企業も選ばれた都市の一部でしかサービスを提供していない。このまばらな通信エリアを埋めていくためには、数千基の新たな基地局設置が必要になる。

 例えば米通信大手ベライゾンが同社のミリ波5Gを図示するために11月19日に公表した詳細な都市別カバー率マップは、受信可能エリアが特定の通りの屋外に限られ、シカゴが最もカバー率が高いことを示している。米ネットワーク分析のルートメトリクスが、多くの人の携帯端末でアプリを試すことで収集した5Gカバー率データも、これを裏付けている。

 自分で確かめてみたければ、ルートメトリクスのアプリで通信会社を選び、「検出された最高の技術」の項目を選択し、紫色の六角形が見えてくるまでズームインすればいい。ベライゾンの場合、ニューヨークでは、ミリ波5Gはロウワーマンハッタンの一部ブロックとミッドタウン、そしてセントラルパークの南角だけをカバーしている。

当面は低周波5Gでカバー

 5Gというスポンジケーキの残りの部分は、より周波数の低い帯域で構成されており、現在の低周波「LTE」で使われているものと、5Gサービス向けに開設される6ギガヘルツ未満の帯域がある。これらの帯域はミリ波のスピードとレスポンスを実現できないが、カバー範囲ははるかに広い。米国で最も広範な5Gネットワークを運営している米スプリントがミリ波帯を避け、4GのLTEと同じ2.5ギガヘルツ幅を使っているのは、このためだ。

 アモン氏は「2020年までに、5Gの通信エリアがすべての大都市圏に広がると考えるのは妥当だ」と語っているが、この楽観的な予想は、スピードは遅めだが到達距離が長い帯域幅の活用で5Gの通信エリアを埋めることを想定している。

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