米ファスト・カンパニー

クリエイターなら知らない人は恐らくいない米アドビ。そこで使われてきたプロ仕様の画像処理ソフトが、手軽な携帯アプリとしてお目見えする。AIで動く米アドビのカメラアプリは、消費者向けソフトウエア市場への本格進出の始まりだ。狙いはどこにあるのか。パラスニスCTOが明かした。

米アドビが消費者市場へ乗り出す(写真はイメージ、写真/Shutterstock)
米アドビが消費者市場へ乗り出す(写真はイメージ、写真/Shutterstock)

 AI(人工知能)が搭載されたアドビの新しいカメラアプリのデモでは、昼間の写真がまるで夜に撮影されたように変えられ、ポートレート写真がアンディ・ウォーホル風のポップアートになり、そしてスポーツイベントでチームの応援をする人々の顔が仮想ペンキで塗られる場面を見ることができる(デモの写真は原文参照)。

 より印象が強かったのは、アドビのアベイ・パラスニスCTO(最高技術責任者)が最近のインド旅行で撮影したポートレート写真を披露してくれたときだった。新しい照明効果を選ぶたびに、あたかも誰かが周囲で部屋の照明を調整しているかのように、さまざまな陰影パターンやハイライト、色彩が被写体の顔に映し出されたのだ。

AIサービス「Sensei」を消費者向け製品に活用

 招待ベースのプレビュー版プログラムとして11月4日に投入されたアプリ「Adobe Photoshop Camera」。これは、「Sensei」という名のAIサービスを消費者向け製品に展開する取り組みの集大成であり、また同社のソフトウエアをプロのクリエイター以外へ広げようとする大きな試みの一環だ。そして本格的な写真編集と、たわいもないビジュアル遊びの両方にとって、かなりかっこよく見えるツールでもある。

 「一人のエンジニアとしての私にとって、これは超、超クールだ」とパラスニス氏は言う。「消費者はこれまでは不可能だった形で、これからは自己表現できるようになる」。

 カメラソフトの次の目玉としてAIを推しているのは、アドビだけではない。ここ数年、スマートフォンメーカーは写真機能を改善するためにコンピュータービジョンに力を入れてきた。顔の後ろの背景をぼかす、ポートレートの照明を強調する、気になる細部をさりげなく消すといった具合だ。

 AIは新型携帯端末のセールスポイントにもなっており、米アップルの「iPhone 11」の「Deep Fusion」機能は、複数のイメージを合成して1枚の写真にしてくれる。米グーグルの「Pixel 4」に盛り込まれた「Super Res Zoom」はデジタルズームの質を改善している。

 だが、アドビのツールは標準的なカメラアプリの機能とは一線を画すように感じられる。ファインダーからのぞきこんでいる間に、Photoshop Cameraはその場で何が起きているかを認識し、シャッターボタンの下のメニューに適切な効果を表示する。風景写真であれば、何の変哲もない空を太陽が降り注ぐ青空に変えるツールや、イメージ全体を油絵のように見せるツールをハイライトで表示する。また、食べ物の写真でカメラを学習させれば、素材が際立って見えるようなフィルター機能が出てくるかもしれない。

 だが、これらは単なる凡庸なフィルターではない。アドビのAIはそれぞれの光景の中で何が起きているのかを認識できるため、フレーム内の別々の部分に別々の照明効果や色彩効果を適用できる。パラスニス氏はたった1つの操作で、教会の外の風景はそのままに内部の写真だけを明るくしたり、都市の地平線の写真を日中から夜に変えるだけで手前に映っているビルの明度が変わったりする様子を見せてくれた。

 従来は画像処理ソフト「Photoshop」で1ピクセルずつ編集する必要があったような効果を自動化することが狙いだとパラスニス氏は説明する。「これまで不可能だったわけではないが、作業で非常に手間がかかり、超ハイエンドのハードウエアと超ハイエンドのスキルが必要だった」(同氏)。

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