
米ファスト・カンパニーが主催する毎年恒例の「イノベーション・バイ・デザイン賞」が発表され、2019年の最優秀賞には米ナイキが輝いた。マーク・パーカーCEOが独占インタビューで小売りの進化について語り、物議をかもしたあの問題で貫いた姿勢の理由も明かしてくれた。
(「2019年イノベーション・バイ・デザイン賞」の他の受賞者については、原文を参照)
米ファスト・カンパニー(FC)の「2019年デザイン・カンパニー・オブ・ザ・イヤー」賞を獲得したナイキ。事業を進めるためにアナログの店舗とデジタルのプラットフォームを織り交ぜた抜け目ない小売り戦略が受賞の理由だ。
アナログとデジタルを融合させた小売り戦略
「ナイキ・ハウス・オブ・イノベーション」と銘打った米ニューヨークの店舗では、展示されている個々のアイテムを携帯電話で探せるようにマネキンにQRコードが付いている。事前に注文すれば、自分のサイズの新しいシューズがロッカーに入っている。ナイキは2018年、新しい機能と消費者コンセプトの開発に10億ドル超を投資した。同社の小売り・フィットネスアプリを支えるデジタル・ロイヤルティープログラム「ナイキプラス」には現在、1億7000万人が参加している。
2018年、シューズ業界がまだデジタルの小売りで他の業界に後れを取っている中、ナイキは前年度(2019年5月期)にデジタルビジネスを35%伸ばし、今年度は四半期ベースで初めてデジタル事業が10億ドル規模に達した。マーク・パーカーCEO(最高経営責任者)によれば、デジタルコマースは2023年までに、少なくともナイキの売上高の30%を稼ぎ出すようになるという。パーカーCEOが語った。
ファスト・カンパニー(以下FC) ナイキのCEOを務めてきたこの13年間で、小売業界で起きた最大の変化は何ですか。
パーカーCEO(以下パーカー氏) 小売りの世界はかなり双方向の対話が進みました。ただ単に商品を売るのではなく、我々は実際にコミュニケーションを取り合って、知識を獲得し、さらに豊かな体験を生み出すのにその知識を使っている。これを実行するスピードは、昔から商品サイドには常に存在した。けれど、今ではモバイルであれ、ナイキ・ハウス・オブ・イノベーションのような大規模なショールーム形式の店舗であれ、消費者体験全体にそのスピードを適用しています。
FC シューズのサイズを測るために足をスキャンするアプリ「ナイキフィット」のようなものは、この小売りモデルの中にどう位置づけられるのでしょうか。
パーカー氏 約半数の人たちは実は間違ったサイズの靴を履いているんです。このスキャン技術のおかげで、足の測定から店舗での正確なサイズ選びに一足飛びで行ける。消費者が店舗で(サイズ選びよりも)意義深いことについて専門家と話すのに費やす時間を増やし、商品についてより多くの情報を得られるようにしたのです。
デザインはブランドにとても重要
FC ナイキでデザインが果たす役割をどう表現しますか。
パーカー氏 デザインはどんなブランドにとっても、ものすごく重要な差別化要因です。肝心なのは、人々にとって意味のあるもの、大事なもの、意外なものを提示することです。けれど我々は常に、アスリートに焦点を合わせてきた。最高峰の舞台で競うには、アスリートに何が必要かという点が当社では多くのイノベーションの原動力になっています。我々は新たな美を生み出す機能ベースのイノベーションに力を入れる傾向がある。人は機能にはこころが動かされないかもしれない。美に引かれるかもしれない。けれど、美学は機能とパフォーマンスに基づいている。これが常に我々の試金石になってきたと思っています。
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー