米ファスト・カンパニー

ロボットが道路や店舗といった公共の場に入り込み始めている。ただ、ロボットに出くわす我々人間はどう関わり合えばいいのか、そうした“取扱説明書”を一切持っていない。今回は、そうした“現場”として米小売り大手ウォルマートの店内通路を紹介しよう。

ロボットと店内でどう向き合う? (写真はイメージ、写真/Shutterstock)
ロボットと店内でどう向き合う? (写真はイメージ、写真/Shutterstock)

 ウォルマートは何年も前から、ベルトコンベヤーに沿って動きながら、商品を詰め込んだり仕分けしたりできるロボットで倉庫を自動化してきた。そして、顧客と一緒に店舗内の通路をうろうろするロボットもゆっくりと展開してきた。2017年にこうしたロボットを50店舗に導入し、19年には350店舗に拡大した(実際のロボットの写真は原文記事を参照)。

 これらのロボットは在庫切れ商品を探して棚をスキャンするよう設計されている。在庫切れをロボットが見つけたときには、現時点では人間の労働者が棚へ補充しなければならないが、時間のかかる雑用を取り除いてくれる。

 これによって、ウォルマートは「人間とロボットのインタラクション(HRI)」の実験台にもなった。「我々にとって非常に価値があるのは、願わくば何百万人もの人が我々のロボットを目にする実物大の実験室を持っている、ということだ」。ウォルマートの棚スキャンロボットの開発元企業ボサノバ・ロボティクスの共同創業者兼CTO(最高技術責任者)、サージュン・スキャフ氏はこう話す。「研究者にとっては、HRIコンセプトを試すとても貴重な実験室であり、規模のおかげで、より素早く真実を突き止められる」。

 ボサノバが手掛ける必要のあったことの1つが、常にロボットが人間に道を譲り、人の邪魔にならず、周囲の人が混乱しないように、向かっている先を伝えられるようにすることだった。進む方向を示すため、ロボットに目を付けるデザイナーもいる。人間は、相手がどの方向に向かうつもりかを理解する方法として、目の動きを観察することに慣れているからだ。

 だが、スキャフ氏としては、ロボットを露骨に擬人化したくなかった。ロボットを何よりもツールのように感じてほしかったのだ。

自動車にも最初は共通言語がなかった

 ロボットが人間とコミュニケーションを図る別の方法を見つけるために、スキャフ氏は誰もが理解する“慣習”に頼った。自動車のウインカーだ。ロボットの開発段階の初期に、ボサノバのチームは間に合わせで作ったウインカーをボディーに取り付け、リモコンで試してみた。

 「ウインカーが問題なく通用すると思っていた。が、実際は答えがノーだったことに驚いた。人々は、道路上での体験を屋内での体験に移し替えるのに苦労した」

 だが、これは別の意味で適切な比較だった。人間が前回、自分たちの空間に機械を受け入れるために適応せざるを得なかったのは、20世紀初めに自動車が道路に侵入してきたときだ。車が最初に人間と共存し始めた当時、設計者たちはまだ共通の対話言語を見つけていなかった。ウインカーもなければ、ブレーキランプもない。その様子は、ロボットが公共スペースに導入されている今とよく似ている。

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